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近藤 史恵 寒椿ゆれる―猿若町捕物帳


この作家の作品は始めて読みました。本作品はシリーズ第四作目らしく、登場人物等の説明はありませんので、少々物語世界に入るのに戸惑いました。とはいえ、一つの巻に短編と言うには少々長い連作の短編が三作収められていて、かなり読み易く、面白い作品です。

「猪鍋」 この物語の主人公の同心玉島千蔭が、つわりで食の進まなくなっている継母のお駒を連れていった評判の猪鍋屋「乃の字屋」の女将が変死を遂げる。千蔭らが訪れているときに騒ぎを起こした男を調べると、「乃の字屋」の亭主龍之介が修行に行った先の「山くじら屋」の息子だと言い、「山くじら屋」の亭主を龍之介が殺したのだというのだった。

「清姫」 水木巴之丞が若い女に刺されたという報せが飛び込んできた。幸い深手ではないとのことだが、巴之丞は見知らぬ女だという。巴之丞の住いに事件の様子を聞きに行くと、その帰りに巴之丞の家の様子を伺う若い女がいた。

「寒椿」 金貸しの内藤屋に盗賊が押し入った。ところが、北町奉行所の同心大石新三郎が内通したらしいという。大石のために疑いを晴らそうと動く千蔭だった。

本作、と言うよりも本シリーズは謎ときを中心に据えた物語のようで、夫々の短編で巻き起こる事件を、主人公の同心玉島千蔭が父千次郎や、人気女形の水木巴之丞、花魁の梅が枝などの手助けを得ながら解決していく人情時代小説のようです。とは言っても、他の時代小説と同様に謎解きそのものは軽く流れていきます。

どうも視点が普通の三人称ではなく、千蔭の小者である八十吉の視点のようだ、などと考えていたら、始めの方に、「めでたいことは、ひとりではやってこない。たいてい、気がかりの種を一緒に連れて来る。」との文章があり、それまでの文章の運びもあって、うまい導入だと、一気に物語に入り込みました。

読了後、何となく違和感を感じていたところ、何かと参考にさせてもらっている「時代小説SHOW おすすめ時代小説ガイド」に、奉行所と猿若町、吉原以外は舞台を巧みにぼかしていて、芝居のように物語の独自の世界を構築している、との指摘がありました。

言われて初めて、街並みや自然の移り変わりなどの舞台背景の描写が少ないことに気づきました。こうした手法は、下手をすると物語の奥行きが無くなり、平板な印象を受けることになりかねないと思うのですが、本書の場合はそうしたことは杞憂に過ぎないようです。

本書では「おろく」と言う女性が全編を通して登場し、夫々の話で事件の解決に尽力します。このおろくは主人公玉島千蔭のお見合いの相手として登場するのですが、この女性が独自のキャラクター付けをされていて、見事です。このシリーズでは各巻毎に異なる女性が千蔭の花嫁候補として登場しているらしく、本書ではそれがおろくという女性であるようです。

登場人物のキャラクタ設定もなかなかに面白く、シリーズの最初から読んでみようと思います。

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