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長岡 弘樹 教場


警察学校を舞台にした珍しい設定の小説で、『週刊文春ミステリーベスト10 2013年』の第1位、『このミステリーがすごい! 2014年版』で第2位に入った評価の高い連作短編集です。なお、タイトルの「教場」は、”きょうじょう”と読むそうです。

第一話の「職質」では、"職質"つまり警察官の職務質問の場面から始まります。

職務質問の対象となる人間はどんな人間がいるか分かりません。というよりも、警察官から見て不審な状況があるからこそ職質をするわけで、対象となる人は普通ではない人であることが当たり前でしょう。その場合、例えば、対象となる人物が大声で恫喝しただけで警察官がひるんでいては話にならず、そのような事態に対応できる十分な地力をつけている必要があるなど、具体的な状況に応じ得る、地力を含めた能力が必要なことはよく分かります。警察学校では、そうした職務質問の訓練も行われているのです。

こうしたトリビア的な知識をちりばめながら、学生同士のミステリアスなドラマが描かれています。

第一章の主人公は宮坂定(みやさかさだむ)といい、数年前に雪道で死にかけていたところを警察官に助けられたことがあり、その命の恩人に対するあこがれから警察官を志望したのだ。同期には宮坂を助けた警察官の息子平田和道(ひらたかずみち)がいて、何かと教官に目をつけられていた。宮田は恩人の息子が成績が上がらず悩んでいるため、何かと力になろうとする。しかし、・・・。

次の第二話「牢問」では、以前インテリアコーディネーターだった楠本しのぶと岸川沙織(きしかわさおり)との話です。取り調べの授業が行われているが、突然沙織が意識不明に陥ってしまう。落ち着いてから聞いてみると、ここ最近不審な手紙が届き、良く眠れないのだという。

第三話「蟻穴(ぎけつ)」は、白バイ隊員にあこがれている鳥羽暢照の物語で、第四話の「調達」、そして第五話「異物」、第六話「背水」と、主人公が変わりながら続きます。

この短編集は、最初は話の終わり方が唐突で、事後の出来事を何も語らないまま終わってしまいます。何も知らない時はこの終わり方に驚いたのですが、以後の物語の中でその後の解決が語られており、連作短編だと分かった次第です。

この短編集には、警察学校内部の出来事の描写も、いじめそのもののような事案が随所に出て来て、非常な違和感を覚えました。それも学生同士のみならず教官の行う行為すら描いてあるのです。

勿論、現実の警察学校がそうだとは思いませんが、舞台設定として少々やり過ぎかとも思いました。確かに、通常の学校とは異なり、典型的縦社会の軍隊並みの規律が要求される警察のことですから、ある程度の規律、締め付けは当然ではあるのでしょう。しかし、本書の描写は程度を超えていると感じました。ただ、ミステリー小説の舞台設定としては、学生同士で事件を起こさせ、それを解決する必要があるのでしょうから、ある程度の軋轢を生むためには必要なこととも感じられます。

と、まずは私の感じた欠点を先に書きましたが、その点を除けば小説の面白さは抜群のものがありました。何より、教官の風間公親(かざまきみちか)が魅力的です。常に冷静で、学生の全てを冷徹に見通しているかのような眼差し。実際、風間の行動は全てを知っているかのようです。この点は、すこし出来過ぎではないかと思わないでもなかったのですが、読了後はそれ程とは感じなくなっていました。この風間が各話の最後に全てを俯瞰しているかのごとく登場し、その場を解決に導きます。それまで何気なく読んでいた挿話が伏線として機能していて、ミステリーとしての仕掛けがきれいにきまるのです。

著者のインタビューを読むと、警察学校のことなど全く知らないところから、資料や関係者への取材等で構想を練り上げていったということですから、それにしてはよく書き込まれているというべきなのでしょうか。

警察学校を舞台にしたミステリーということで、少々舞台設定に無理が無きにしも非ずですが、かなり面白い小説でした。

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