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樋口 毅宏 さらば雑司ケ谷


先日、何となくネットを見ていたら、日本のクエンティン・タランティーノという紹介文があり、その作家が樋口毅宏という人でした。タランティーノと言われたら読むしかなく、早速図書館で借りてきて、他に未読の本が山積みしてあるのに、本書を読み始めた次第です。

池袋の東南、というよりも、山手線の内側、目白駅の西にある町「雑司ヶ谷」。そこは、早稲田大学からのほど近く、学習院大学のすぐ東側、日本女子大目白キャンパスのすぐ北にある町です。40年前の学生時代、私はこの町の近くには住んでいたのですが、実際に行ったことはありませんでした。

その町が、新宿や渋谷、池袋といった街よりも危険な町で、池袋を根城にするヤクザ達も決して足を踏み入れようとはしない町だというのです。その町を支配するのが、新興宗教の教祖であり、主人公大河内太郎の祖母でもある大河内泰でした。

とある事情から中国に渡っていた大河内太郎は、5年ぶりに雑司ケ谷に帰ってきた。ところが、親友の京介は既に死んでおり、代わりに、京介から耳を引き裂かれた芳一がこの町のワルを束ねているのだった。太郎は、大河内泰から豪雨により5人が死亡した事故の裏を探るように命令される。そのうちに、太郎の中国行きの原因を作った男でもある芳一と対決することになるのだった。

「エロスとバイオレンスが炸裂し、タランティーノを彷彿とさせる引用に満ちた21世紀最強の問題作」。これは、本書の文庫版の裏表紙にも書いてる惹句の一部です。「21世紀最強」かどうかは判りませんが、「エロスとバイオレンスが炸裂」しているのは間違いありません。それも、ストーリーそのものは奇想天外と言うほかなく、その文体と言いますか、言葉の選択も含め、独特に過ぎるのです。

本書(文庫版)の巻末に、「この小説は文中に表記した以外にも、以下の人物と作品へのオマージュ、霊感、意匠、影響、引用、パスティーシュで構成しているところがあります。」として、あとがきの町山智浩氏によれば「約60余」ものネタ元を挙げてあります。

残念ながら、私はその一割も判りませんでした。タランティーノも好きで殆どの映画は見ているつもりなのですが、私が映画の内容を覚えていないこともあって、特定の場面など分かる筈もありません。

でも、『人間交差点』『グラップラー刃牙』『北斗の拳』といったコミックや、あの『笑っていいとも』などもネタ元になっているのです。特にタモリが語った、テレフォンショッキングに歌手の小沢健二が来たときの「小沢健二論」を取り上げているところはインパクトが強かったようで、この著者の手で、別途『タモリ論』という作品が出版されているほどです。

「猥雑」という言葉がぴったりとくるような、漫画チックとしか言いようがない作品です。人によっては下品としか捉えられないと思います。個人的には少々遊びが過ぎるという印象が強く、もう少し、ストーリー性を重視してあれば、と思ってしまいました。

この作品を読んでタランティーノを彷彿とさせるかどうかはよく分かりませんが、恐る恐る手を出して、若干の火傷を負ってしまった、というところでしょうか。こういう作品には手を出さなければ、何も問題は無いのです。と言いつつ、続編を借りてこようとする自分がいます。

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