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松井 今朝子 吉原手引草


この作品はなかなかの読みごたえのある作品でした。

一人の男が、吉原の中である事件について聞き取り調査をしています。章毎に聞き取りの相手が変わり、その章は聞き取り相手の言葉で語られます。

この物語は構成からして面白いのです。最初の章は、読者には物語そのもののテーマすら知らせないまま、吉原の引き手茶屋の内儀の話から始まります。そこでは、まず吉原の町並みの説明から、吉原で遊ぶ際の手順、しきたり等が語られ、最後に葛城花魁のことを聞くところで追い出されるのです。

次いで、大籬(おおまがき)の舞鶴屋の見世番寅吉の話です。大籬とは妓楼の中でも大手の見世のことで、花魁道中を行うような花魁を抱える見世を言うそうです。ここでは具体的に見世に上がってからのしきたりなどが語られ、最後に葛城花魁のことを尋ねて終わります。

このように、舞鶴屋の番頭、舞鶴屋抱え番頭新造などと、次から次にと聞き取りの相手が変わっていき、葛城花魁の起こした事件とは何かが、次第に明かされていきます。同時に、吉原とはどういうものなのか、時代小説で見聞きする吉原という存在の説明に引き込まれている自分がいるのです。作者の博識多才ぶりがよく分かります。

この作品は、吉原を舞台にしたミステリーなのですが、その謎は何なのか、その謎はどうやって実行されたのか、聞き取りをしている人物は誰なのか、など読み手は吉原の情報と共に、この謎に満ちた物語に引き込まれていきます。

更には、物語の中の語り手も、吉原は虚実ない交ぜた駆け引きの世界であり、その駆け引きこそが面白い、と言い切ります。そして、これまでの語り手の話同士の矛盾に対しても、嘘で成り立つ吉原の言葉を信じたらだめだというのです。

そして、最後の章「詭弁 弄弁 嘘も方便」の章では全ての種明かしが為されます。ミステリーとしてこうした手法が評価されるのかどうかは私には分かりませんが、久しぶりに「意外性」という意味でも面白い小説に出会ったと思わせられました。

吉原についての情報と同時に、それをミステリーとして仕上げたその手法には、ただ感じいるばかりでした。などと感心していたら、第一三七回直木賞を受賞した作品でした。

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