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今野 敏 欠落


前作の『同期』の続編です。『同期』を読んだのが平成10年の10月なので、5年ぶりに続編を読んだことになります。『同期』の内容は最早殆ど覚えてはいない、というのが正直なところなのですが、「この作者の集大成といえるかもしれない。」という内容のメモや、今回読んだ本書の内容から思い出した断片から、かなり面白いと思った小説だったことを思い出しました。

警視庁捜査一課刑事の宇田川は、初任科で同期だった大石陽子が、着任早々の立てこもり事件で被害者の身代わりになっていることに気が気ではなかった。一方、宇田川が担当している多摩川の河原で起きた殺人事件の捜査もまた行き詰っていた。そんな折にやはり同期で懲戒免職になっていた蘇我から連絡が入る。

普通、刑事部と公安部とは仲が悪い、というのが警察ものの小説では定番です。作者の今野敏にしても、刑事が主人公であったり、公安警察を主人公にしていたりという個別の作品はありますが、そこでもこの両者は仲が悪いものとして描かれています。しかし、本作は初任科つまりは簡単に言えば警察学校の同期という設定を持ってきて、刑事と公安とを仲間にすることで、一編の友情物語として仕上げています。

「友情物語」と書くと、感傷が先走った物語のように聞こえますが、そこは今野敏の物語です。刑事ものの定番をふまえながら、公安との確執も描きつつ、『同期』が宇田川の成長物語でもあったように、本書も宇田川のさらなる成長をも描くという、贅沢な内容になっています。

いろんなレビューを読んでみると、リアリティーの無いストーリーという声を少なからず見ました。でも、そこは好みの問題でしょう。確かに、『隠蔽捜査』ほどの完成度は無いとは思うのですが、本書は本書なりにかなり面白く読ませて貰いました。

主人公の「勘」が冴えわたる点など、少々無理があるとは感じないこともないのですが、それなりのフォローも入り、本書としての世界観は出来上がっていて、決してリアリティーが無いとまでは言えないと思えるのです。

続編を期待したい一冊です。

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本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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