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高嶋 哲夫 首都崩壊


「首都崩壊」というタイトルからくる、地震による惨禍が描写された作品、との思い込みとは異なる内容の作品でした。

国土交通省のキャリアである森崎のもとに、日本の東都大学地震研究所の前脇とアメリカの大統領特使という立場に居るロバートというまったく異なるルートから東京直下型地震発生の可能性が高いという情報がもたらされた。そのすぐ後に同じ情報に接した総理大臣の能田は、国交省内に首都移転チームを立ち上げる。以前首都移転構想のリーダーだった村津を首都移転室の室長とし、森崎もそこに所属することになるのだった。

以前のこの作家の作品である『首都感染』のときもそうだったのですが、主人公の立場があまりにも都合が良すぎます。つまり、アメリカ大統領特使と親友なので外交の重要案件に総理よりも先に接しますし、また日本の地震研究の第一人者とも親友であって、常に最新の情報を抱えている立場にいるのです。一方新室長の村津の娘は世界的な建築家の所員であり、首都移転の青写真を作るチームの一員です。

本書の中心的な論点は、地震そのものよりも、地震をきっかけとする首都移転と、東京の崩壊に伴う経済面での危機にあります。その中心に主人公がいて、地震に対する脆弱性を指摘された日本の格下げを図る格付け会社との折衝や、また乗り込んできたヘッジファンドに対応したりと大忙しで、それには最新の情報が必要だったのでしょう。

こうした特別な視点を持つ物語であることからか、エンターテインメント小説としてみると若干迫力に欠ける印象はあります。また、室長村津の個人プレーとして都合よく進みすぎるきらいもあります。しかし、それでもユニークな視点を持ったシミュレーション小説として、はまる人もそれなりには居るのではないでしょうか。

私も、物語としての面白さを否定しているのではありません。政治的、経済的に関連してくる膨大な問題点を捨象し、首都移転、および必然的に考慮すべき(と書かれている)道州制の問題を中心に据え、その絡みとして格付け会社との交渉、ヘッジファンドとの対決が側面を固めるエピソードとして描かれ、それはそれで面白いのです。

もともと私は「経済」の仕組みが良く分かっていないので、描写されている経済関連の情報があまり意味を持って入ってこないということもありますし、道州制の問題にしても、その本来意味するところまで深く勉強し、考えたことが無かったので、その意味では考えるきっかけにもなりました。

ちなみに蛇足ながら、「ヘッジファンド」の意味が良く分からずに調べてみました。ここでいう「ファンド」とは投資家集団であり、公募ではなく私的に集めた資金を様々な手法で運用するファンドをヘッジファンドと言うそうです。言わば私的な巨大投資家集団ですね。正確には意味合いが異なるようですが、ここではそのようなものと考えてもいいでしょう。

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