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東山 彰良 路傍


何とも首をひねるしかない、6編の物語からなる長編と言ってもいい連作の短編集です。

千葉の船橋を舞台に、まったく普通のチンピラとしか言いようのない二人の若者の行動を、ただただひたすらに追いかけた、そんな物語です。全体を通したストーリーというべき話の流れを掴むことができません。

いつものバーの帰りに、酔っ払いから抜き取った金でソープに行った帰り、いたずらで目の前のアパートの一部屋にかけた電話を発端として、その部屋に入ったところから、抜き差しならない事態に陥る、俺と喜彦だった

「猥雑」としか言いようのない、雑然とした物語と言うより表現のしようが無い本書は、それでも第11回の大藪春彦賞を受賞しています。何しろ作者の情報は全くなく、単にこの作者の『流』という作品が2015年の直木賞を受賞したので、ついでにほかの本も読んでみようかと思っただけなのです。

ところが、読了後、馳星周氏の「あとがき」を読んで驚きました。大藪春彦賞受賞作だということは本の裏表紙に書いてあったのですが、まさか選考委員四人全員の満場一致で、それも短時間での決定だということまでは思いもしませんでした。

何しろ、馳星周氏の絶賛ぶりはすごいのです。「どれだけ技巧を凝らしたミステリも、・・・・・・サスペンスも、書き手が対象に深く切り込んでいくわけでもなく、頭に浮かんだことをただ綴っていった物語に蹴散らされてしまった。」と述べています。才能だけで書かれているこの物語は人生は不公平であることを立証した、と言いきっているのです。

「頭に浮かんだことをただ綴っていった物語」とは言いえて妙で、まさにその通りなのであり、だからこそ話の流れをまとめることができないのです。

更に、「現実はこうなのだと読者に提示しているだけだ。」として、才能だけで書かれたこの物語は、その語り口の心地よさに最後まで読まされるのだそうです。

この物語を読んで、才能豊かと、誰一人異論なく言いきるプロの作家たちをこそ素晴らしいと思ってしまう私でした。この物語をそこまで評価できる力量が、やはり才能なのでしょう。

確かに、文庫本で233頁という分量を違和感を感じながらも最後まで読み切ったのではあるけれど、酒と暴力と女を繰り返したたきつけてくるこの物語は、この本単体で見る限りは多分二度と読まない作家に入れると思います。しかし、直木賞を受賞するだけの力量を持っていることもまた事実ですから、もう少しは追ってみましょうか。

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