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梶尾 真治 壱里島奇譚


さすが梶尾真治というしかない癒し系のファンタジー小説です。

生活に倦んでいた宮口翔一は「おもしろたわし」の調査を命じられて、熊本の天草に飛んだ。飛んだ先の壱里島は風光明美な島で、信柄浦岳を中心として何かと不可思議なことが起きていた。同じ時に壱里島に来ていたヒーリングスポットライターの機敷埜風天と共にそのパワーの源を目指す宮口だった。

わが郷土の熊本の、天草のとある小島を舞台にした、梶尾真治お得意の物語です。ただ、今回は梶尾真治が一番の得意分野であるタイムワープものではありません。まあ、まったく無関係ではありませんが。

主人公は会社を辞めることをも考えている宮口翔一というサラリーマンです。彼が上司に命じられて、郷土熊本の天草へと向かうところから話は始まります。

調査の元となったのは、不思議商品の「おもしろたわし」。その商品調査が目的だったのですが、訪ねて行った先では次々と不思議な現象に出会います。そのうちに、「おもしろたわし」の調査は二の次になり、この島の魅力に取りつかれている自分に気づくのです。

梶尾真治作品特徴でもあるのですが、悪人は出てきません。取り除くべき障害はあります。でも、具体的な人間像としての悪人は出ずに、障害の陰に隠されています。描くべきは障害に立ち向かう主人公であり、その仲間たちであって、その絆であるようです。

梶尾真治作品の人気の秘密の一つは、最後に待っている意外性にあると思います。一通り進んできた物語がそのまま終わってもよさそうなのですが、最後にひとひねりがあり、読者はそのひねりに胸を打たれるのです。

そして、梶尾真治作品のもうひとつの特徴と言ってもよさそうなのがロマンティシズムだと思うのですが、その色合いも本作では前面には出ていません。代わりに本作品では人の思いを、恋人や家族、そして故郷に対する思いを謳いあげています。

決して派手ではないけれど、作者の温かな気持ちが伝わり、読み終えてから爽やかな心地よさが残る作品でした。

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