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東野 圭吾 ナミヤ雑貨店の奇蹟


やはり東野圭吾という作家さんはうまい、としみじみ思わされた一冊でした。この作品は第7回中央公論文芸賞を受賞しています。

東京から車で二時間ほどの場所に位置する町の一角にある雑貨店は、どんな悩みにも応えてくれることで有名だった。ある日、コソ泥を働いてきた若者らが、もうだれも住んでいないこの雑貨店に逃げ込んできた。ところが、そこに一通の封書が舞い込む。誰かが悩み相談の封書を投げ込んできたのだ。若者らは、この封書を無視することもできず、返事を書くことにした。

この作品は推理小説ではありません。言ってみればほのぼの系のファンタジー小説というべきでしょうか。

私が読んだ東野圭吾の作品の中でファンタジー系の小説と言えば『パラドックス13』をまず思い出します。『トキオ』もファンタジーといっていいでしょう。私が読んでいないファンタジー系の作品としては『虹を操る少年』や『パラレルワールド・ラブストーリー』が挙げられているようです。

一応連作の短編集という構成なのでしょうが、これだけ各話が関連してくると一つの長編として捉えるべきとも思えます。それほどにそれぞれの物語が他の物語の伏線としても機能していて、最終的に全体として一つの作品になっているのです。いや、本書の成り立ちをあらためて考えると、やはり一冊の長編と言うべき気がしてきました。

あまり書くとネタバレになるので書けませんが、「ナミヤ雑貨店」を中心として様々な人たちの生き方が時代を越えて交錯し、互いに助け、助けられして影響を与えあっているのです。私たちの人生もそうで、今のあなたのその行為は他の人に深く影響を与えるかもしれないよ、人間としてのお互いの存在は互いに深くかかわりあっているのだよと言っているようです。

この物語は推理小説ではありませんが、例えばコソ泥を働いてきた若者らや「ナミヤ雑貨店」に届く手紙を書いた人の素性、その手紙を出した人にまつわる秘密、悩みに答え続ける「ナミヤ雑貨店」の店主の最後の願いの意味など、次々に沸き起こる謎を丁寧に説き起こしながら、物語の終わりに向かいつつも張られていた伏線はきれいにかたずけられていきます。

この物語は、純粋に人間を描いた心温まるヒューマンスートリーとしても面白い物語として仕上がったと思えます。それが、興味をふくらませられる謎絡みでの物語に仕上げられていいて、読み手の興味は更に増すのです。

それにしても、何の変哲もない一軒家を舞台に、「手紙」という道具立て一つで、読み手の心に静かに語りかけてくる物語を紡ぎだすのですから、この作者のストーリーテラーとしての力は、あらためて言うまでもないのですが、うまいものだと感心させられます。

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