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今野 敏 警視庁FC


先日読んだ、今野敏著の『マル暴甘糟』の雰囲気に似た、ユーモラスな警察小説でした。

警視庁の地域部地域総務課所属の楠木肇は、地域部の中に新設された「FC室」との兼務を言い渡された。そこには通信指令本部の管理官であった長門室長を始め、組織犯罪対策本部組織犯罪対策四課、いわゆるマル暴の山岡諒一、交通部都市交通対策課の島原静香、交通部交通機動隊の服部靖彦らが集まっていた。そして、ある映画の撮影のために西新宿に来ている今、「ロケバスの中で人が死んでいる」という声が聞こえてきた。

そもそも『警視庁FC』のFCとは「ファンクラブ」でも「フットボールクラブ」でもなく、「フィルム・コミッション」を意味します。つまりは撮影場所誘致や撮影支援をする機関であり、「映画やテレビドラマの撮影に対してさまざまな便宜を図ること」を意味するらしいのです。

現実には、JR西日本などのように民間企業で同様のサービスを行う部署を設けていたり、関連部署にフィルム・コミッションを設け、地域活性化、文化振興に役立たせようとしている地方自治体が多いようです。

そうしたサービスを警察内に設けて市民サービスを図ろうとしている動きを描いたのが本書です。実際にはロケ地での交通整理などが主な仕事でしょうが、ロケ地を縄張りとするヤクザを排除する、などの仕事をこなすことを期待されている部署でもあります。

本書では、こうした舞台設定がユニークというだけではなく、主人公がまた独特です。地域課でサラリーマンのような生活こそ幸せと思っていて、余分な仕事はできるだけ自分の作業領域内から排除しようとする男なのです。近時の今野敏作品に見られる独白場面が多いことも特徴として挙げられるでしょう。

というよりも「内心の声」といったほうがいいかもしれません。事件現場で作業する警察官らに対しての作業量を増やすなという愚痴であったり、同僚のマル暴刑事山岡に対しての批判的言動などががすごいのです。勿論内心の声ですから、表には出しません。それどころか反論することこそエネルギーの無駄だとして状況に流されていきます。その結果、捜査状況をいい方向へと導いてしまうのです。

物語の流れとしては、どんでん返しが続き、とても面白い物語として仕上がっています。ただ、いつものことではありますが、突っ込みどころもそれなりにはあります。

一番は主人公楠木が「FC室」に選ばれた理由が何も示されていないところでしょうか。上司にからは「やはり面白いやつ」などの言葉があるもの、楠木を選んだ理由については何もありません。確かに、この言葉が最後にはそれなりの意味を持ってはくるのですが、どういう点で楠木を選んだのかという理由にはなっていないようです。

また、事件の解決に向けての様々な流れも、少々都合が良すぎるところも感じられます。

しかしながら、そうした疑問点も、まあいいか、とスルーさせてしまうだけのテンポの良さがあり、またそのテンポに乗っかって、楽しく読み飛ばせる作品です。

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