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富樫 倫太郎 土方歳三(上・下)



新選組の活動に対する奇をてらった新たな解釈もない、歴史小説としてではなく活劇小説としての、楽しく読める新選組小説という印象の作品です。

日野の田舎で喧嘩や女のことで奉公先をしくじってばかりの歳三は、奉公人は務まらないとして石田散薬の行商に出る。出先で剣術修行に励んでいた歳三は、日野村に剣術の出稽古に来ていた天然理心流の島崎勝太、後の近藤勇と立ち合い、義兄弟の契りを結ぶ。その後、天然理心流の道場の試衛館に居候するようになっていた歳三は、試衛館の仲間らとともに京に上る決意をする。

以上のところから物語は始まり、京での新選組結成、池田屋事件までが上巻です。下巻では、山南敬助の脱走事件、油之小路事件、鳥羽伏見の戦いの敗戦を経て江戸への退却、北海道へ渡り蝦夷政府を立ち上げ、そして新政府軍との戦うまでが描かれています。

富樫倫太郎という作家さんは名前だけは知っていても読んだことはありませんでした。いつかは読んでみよううと思いつつ今に至ったのですが、真っ赤な装丁のこの本が目にとまり、富樫倫太郎の土方歳三というので早速借りました。

上下二巻で七百頁を超えるボリュームなので、覚悟をして読み始めたのですが、思っていた内容とは異なりサクサク読めてかえって驚いています。平易な文章で会話文が多く、時代背景も必要最小限の説明なのでじつに読みやすい。逆にもう少し新選組に対する独自の解釈を入れてもらってもいいのではないかと思うほどです。

勿論、歳三と近藤勇の出会いの場面など、細かなところでは富樫倫太郎という作家なりの見方で登場人物が動いていて、それはそれなりにおもしろいのです。しかし、それ以外の歴史的事実の解釈での面白さはありません。代わりに活劇小説として読めばかなり面白い物語だと思います。

しかし、下巻に入り、江戸への退却のあたりからは、土方歳三の人間像が生き生きとしてきたように感じました。特に北海道へ渡り、蝦夷政府を立ち上げ、そして新政府軍と戦うころになると、これまでの本書の印象とは異なってきます。会津での戦いを経て、榎本武揚と共に北海道に渡るころの新選組、つまりは土方歳三の消息について私があまり知らない、ということもあるのかもしれません。

これまでこの時代を詳しく描いた小説で思い出すのは北方謙三の『黒龍の柩』くらいではなかったかと思います。著者の富樫倫太郎氏もここらの物語は思い入れがあるようで、他に『箱館売ります』を始めとする『蝦夷血風録』シリーズも書いておられます。

繰り返しになりますが、全般的にみて、私がこれまで読んだ新選組ものからすれば一番通俗的と言えるかもしれません。土方歳三の幼いころから新選組を立ち上げ、北海道で新政府と戦い戦死するまでを700頁を超える痛快読み物として仕上げてあります。しかしながら、その頁数の割には軽く読みとおすことができました。会話文が多く、様々な出来事も深く踏み込むことなく流してあります。

蛇足ながら、「朝日新聞デジタル:土方歳三の最期を記した書」などには、歳三の最後は明確ではなく、一本木関門近くでの戦死という話も「司馬遼太郎の『燃えよ剣』の影響」ではないかと書いてあります。やはり、子母沢寛の三部作もそうですが、何より『燃えよ剣』はあちこちで出てくる作品であり、もう一度読み返してみようと思います。

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