FC2ブログ

雫井 脩介 犯人に告ぐ2  闇の蜃気楼


「振り込め詐欺」の手法を使い仕組まれた「誘拐ビジネス」に対する神奈川県警の巻島史彦警視を描く警察小説です。警官がテレビに出演し犯人に呼び掛けるという衝撃的な内容だった前作からすると、少々見劣りのする物語でした。

ミナト堂社長水岡はその息子裕太と共に何者かに誘拐されてしまうが、水岡のみが解放された。犯人は何故に水岡のみを簡単に開放してしまったのか。神奈川県警の巻島史彦警視は、この誘拐犯の捜査指揮を任されることになり、再び陣頭指揮に立つことになった。

本書は前作とは異なり、犯人探しの要素は全くなく、犯人側の視点と警察の視点とが交互に描かれ、犯人と警察、すなわち巻島との知恵比べが見どころになった小説です。この点で、前作同様の緊迫したサスペンス小説だとの私の思い込みは外れ、見劣りする、という印象になったのでしょう。

本書の冒頭は「振り込め詐欺」の詐欺の様子が描かれ、その犯人チームの詐欺行為に傾ける努力の様子などが示されます。そこで焦点が当てられているのが砂山知樹、健春の兄弟であり、指南役である淡野悟志です。この振り込め詐欺の実行の様子それ自体も一つの物語であって、その後の物語の伏線ともなっているのですが、個人的にはこの部分は余分としか思えませんでした。

何しろこの本を手に取ったのが前作『犯人に告ぐ』の面白さのためであり、本書の内容に対しては何の予備知識も無かったのです。つまりは前作のような緊迫感に満ちたサスペンスを期待していたにもかかわらず、「振り込め詐欺」の実行の様子が淡々と(と言っては語弊がありますが)語られるのですから、肩すかしをくらった印象なのです。

その後、神奈川県警の様子が少しずつ描かれていき、巻島警視が登場し、巻島の読みが深くなってくる後半はそれなりの面白さが出てきます。特に正体不明の淡野の仕掛けに振り回される被害者、警察に対し、巻島が少しずつ巻き返していく過程は、お定まりの流れはいえやはり読ませる作家という印象です。

ただ、やはり前作のインパクトが強く、どうしても引きずってしまいます。

他にも、前作から登場する県警本部長である曾根要介の描き方が若干強引過ぎると思われることや、特別捜査隊隊員の小川かつおの在り方が、やはり安易に過ぎるように思えることも気なるところではあります。共に、県警本部長になるキャリアにしては乱暴に過ぎるし、小川にしても一人前の捜査隊員ではありえない設定ではないかと思えます。

でも、こうした点は小説のデフォルメの範囲内であり、巻島を目立たせる細工の一つとして取り立てて言うほどのことではないとも思うのです。

ともあれ、前作の面白さが群を抜いていたため、そのハードルの高さで本書を見ていたことは否めず、そうした先入観を無くしてしまえば、やはりそれなりの面白さを持った警察小説ではあります。

とくに、今回犯人として登場した淡野はそれなりに魅力を持った悪役であり、今後のこのシリーズの行く末を暗示しているようです。今後の展開を待ちましょう。

関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

siro

Author:siro
このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR