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野口 卓 隠れ蓑: 北町奉行所朽木組


北町奉行所朽木組シリーズの前作『闇の黒猫』に続く第二弾で、二作目ということで慣れてきたものか、前作よりは面白かったように感じました。

「門前捕り」 新任の同心である名倉健介は「門前捕り」を任されるが途中で泥坊を取り逃がしてしまい、腹を切ることになってしまう。面目にかけて賊を捉えなければならない町方だったが、朽木勘三郎も朽木組を挙げて探索に乗り出すのだった。

江戸時代、武家屋敷内で泥坊を捕らえたときは、門前で待つ町奉行の配下に突き出し、町方は「召し捕った」などと、大声をあげ、芝居がかりに逮捕したそうで、これを「門前捕り」と言ったそうです。武家屋敷と町方では警察権の管轄が異なっていて、町方を取り締まる町奉行所の役人を屋敷内に入れないための処置を言います。

本作では、これからもシリーズに顔を出すであろう勘三郎の藤原道場での後輩の北村太一郎が、屋敷内で泥坊を捉まえた侍として登場します。

「開かずの間」 勘三郎の配下である岡っ引きの伸六は、手下の弥太の相談に乗った。弥太の幼馴染である下り酒問屋和泉屋のひとり息子文太郎が、女の幽霊の「・・・恨みを晴らすときが来た。和泉屋を滅ぼしてやる。・・・」との言葉を聞き、寝付いてしまったという。弥太が調べた結果を聞きながら、伸六は一つの結論を得る。

この話では勘三郎はほとんど顔を出しません。代わりに、伸六がまるで安楽椅子探偵のような立場で事件を解決するという、少々変わった雰囲気の捕物帳です。また、本作は弥太の幼い頃の話をも示していて、弥太の育ちを説明する作品にもなっています。

「木兎引き」 千八百石旗本大久保家の隠居、主計(かずえ)は小鳥を育てることに執着していた。その主計が「ズク引き」というミミズクをおとりにして小鳥を捕らえるところを見ようと言う。餌刺(えさし)の手引きで「ズク引き」を見ることになったが、そこに珍しい鳥がかかり・・・。

鷹狩りの鷹の餌にする小鳥を捕らえる鳥刺しのことを「餌刺(えさし)」と言うそうです。この作者の人気シリーズの『軍鶏侍』では軍鶏の生態が詳しく述べられていますが、本作品では江戸期における小鳥の飼育に関して種々の知識が記載されています。捕物帳というよりは、「ズク引き」を中心とした小鳥に関するトリビア的知識の作品です。

「隠れ蓑」 北村太一郎が、勘三郎が藤原道場時代に免許皆伝を巡り遺恨のあった小池文造を見かけた、との知らせを持ってきた。非常に荒んだ雰囲気だったという。そのころ、主人や奉公人は勿論、腕の立つ用心棒まで殺すという賊を追い掛けていた勘三郎だったが、小池文造を見かけたという見世物小屋を調べさせるのだった。

藤原道場時代の性格に問題のある部屋住みの同僚、という設定は特別なものではないのですが、その後の探索で浮かび上がってくる小池文造の様子は普通ではありません。いや、小池文造は普通なのです。普通であるところが、物語としては普通ではないのですね。そうした矛盾を抱えた小池について、勘三郎は「人というものがわからなくなった。」と伸六に一人ごちます。

本作品を読むと、北町奉行所朽木組シリーズとしての世界観がはっきりとしてきたように思えます。

第一巻ではまだ本シリーズの性格が不明で、これまでの捕物帳とは少々異なる印象、チームとしての朽木組を前面に出した作品という程度の印象しかありませんでした。

しかし、『軍鶏侍』で見せた物語の情感、奥行きが本シリーズでも感じられ、次回作がとても楽しみになっています。単に、捕物帳としてではなく、勘三郎を中心とした朽木組というチームそのものが生き生きとして動き出している印象です。単なる捕物帳としての構成を超えたところで、物語としての面白さを発揮してくれるシリーズとして成長してくれることを期待できる作品だと思います。

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