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高田 郁 美雪晴れ―みをつくし料理帖


このシリーズも余すところあと一巻となってしまいました。丁寧に紡がれた文章は変わらず、決して派手さはないけれども、読み手の心にゆっくりと染み入ってくる作品です。

名料理屋「一柳」の主・柳吾から求婚された芳。悲しい出来事が続いた「つる家」にとってそれは、漸く訪れた幸せの兆しだった。しかし芳は、なかなか承諾の返事を出来ずにいた。どうやら一人息子の佐兵衛の許しを得てからと、気持ちを固めているらしい―。一方で澪も、幼馴染みのあさひ太夫こと野江の身請けについて、また料理人としての自らの行く末について、懊悩する日々を送っていた…。いよいよ佳境を迎える「みをつくし料理帖」シリーズ。幸せの種を蒔く、第九弾。(「BOOK」データベースより)

これまでと変わらずに四つの章から成っている本書は、常のような大きな難題はなく、それどころか天満一兆庵のご寮さんであった芳の祝言が挙げられたりと、シリーズの終わりを迎えるにあたり、登場人物の周りもそれなりの落ち着きを見せ始めています。

勿論、澪も自らの行く末について悩んではいるのですが、これまでの奈落の底に突き落とされるかのような大事件による悩みではありません。料理人としての成長に結びつく懊悩であるところがこれまでとは異なります。

芳がいなくなり、澪自らも「つる屋」から旅立つ日が近くなり、作者の筆も将来への描写が目立つようです。

同じ市井の人情物を描く作家でも、宇江座真理のように比喩を多用し情感豊かに描く出す文章とは異なり、高田郁という作家の文章は決して美文とは言えないと思います。しかし、人物の内面を独白や地の文でていねいに描き出すその手法は、同様に心に染み入ります。

アクション性の強い冒険小説や人が簡単に切り殺される剣戟場面の多い時代劇などを続けて読んでいると、本書のような心が温かくなる作品を読みたくなり、読み終えると、実際ホッとするのです。

残り一巻となったこのシリーズは、やはり読後は心温まるものでした。

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