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海堂 尊 ナニワ・モンスター


いわゆる桜宮サーガに位置づけられる物語です。つまりは「このミステリーがすごい!」大賞を受賞したチーム・バチスタの栄光の世界観を持った物語です。

世界的に新型インフルエンザ「キャメル」の猛威が伝えられ、政府による水際作戦が敷かれる中、浪速府で第一症例が報告された。早速、浪速府に経済的な打撃が加えられるが、浪速府知事の村雨弘毅は対抗策を打ち出す。そこに噛んでくるのは、「医療界のスカラムーシュ」という異名を持つ、村雨浪速府知事の陰のブレーンである彦根新吾であり、浪速地検特捜部副部長の鎌形雅史であった。

海堂尊の小説には、二つの系統があるように感じられます。その一つは作家名を海堂尊という医者のオートプシー・イメージング(Autopsy imaging、Ai、死亡時画像病理診断)にかける思いを込めた作品群と、それ以外の作品群です。そして、前者、Aiへの思いを込めた作品群は、それ以外の作品群があまりに面白いのに比べ、作者の頭の良さが空回りしてか、Aiありきの強引な話にしか思えません。残念ながら、本書もその中に入る作品でした。それ以外の作品の面白さを知っているだけに非常に残念です。

本書は三つの章からなっています。まず「第一部・キャメル」はかなり面白い物語との印象から始まりました。新型インフルエンザ「キャメル」のパンデミックを思わせる物語の展開は、浪速の町の日常と非日常とをうまくかき分けて描写してあり、パニック小説のイントロとして素晴らしく、かなり期待できると思いながら読み進めました。ここまでが2009年2月から2009年5月までのお話です。

おかしくなったのは「第二部・カマイタチ」からです。話は2008年の6月へと一年ほど遡り、同時に舞台は東京地方検察庁へと移ります。そこでは東京地検特捜部のエースと目されていた鎌形雅史の浪速地検特捜部への移動の話が持ち上がっていました。鎌形検事の浪速転勤に伴い、浪速府の村雨知事と彦根の思惑は鎌形の取り込みを図ります。

そして「第三部・ドラゴン」で、本書の本体であるAiの話へと展開します。ここでは日本の現体制そのものへの変革の話まで膨らみ、物語は当初のよくできたパニック小説という雰囲気から、とんでも話へと一大転換してしまうのです。

かつて海棠尊の『ノセント・ゲリラの祝祭』を読んだときの、論理の空回りとしか思えない物語展開に驚いた記憶が蘇りました。強引としか思えないその物語は作者のAiへの熱い思いは伝わるものの、物語としては決してよくできたとは言えない作品でした。本書も残念ながら同様なのです。「第二部」で登場した鎌形雅史など、かなり意味ありげな強烈なキャラクタとして現れたのですが、結局はその与えられた存在感を発揮しないままで終わってしまいました。

詳しく書くとネタバレになり書けません。いや、詳しく書こうと思っても本書で展開される論理についていけない私では詳しく書く力がないと言うべきなのでしょう。ということで、ぜひ自分で読んで確かめてください、とも言いにくい作品でした。

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