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堂場 瞬一 交錯 警視庁追跡捜査係


なかなかに面白く読んだ警察小説でした。

沖田大輝と西川大和は、共に未解決事件を専門に捜査する警視庁追跡捜査係に属する刑事で、沖田は新宿で起きた無差別の殺人事件の犯人を刺して一人の小学生を助けた男を追跡し、西川は青山の宝飾店で起きた強盗事件の追跡捜査を担当していた。それぞれに捜査が進む中、二つの事件は思いもかけない関連を見せ始める。

どちらかと言うと無神経といっても良い行動派の沖田大輝と、頭脳派の西川大和という対照的な二人の刑事の活躍が描かれています。こうしたコンビ自体は本書独自のユニークな設定とまでは言えませんが、それなりに息のあったバディものとしての面白さがありました。

行動派の沖田刑事の追う男は”名無し”と呼ばれ、わが身の危険も顧みず三人を殺した連続殺人犯から小学生の命を助けた男であり、一種の英雄的な人間とも言える男です。沖田はそんな男を追跡することへのジレンマをも抱えながらも、殺されそうになった小学生への思いやりと、その母親へのほのかな恋心を抱えており、そのことが本書の彩りとなっています。また、沖田刑事は時計マニアであり、その趣味を通して西川刑事との接点が広がっていきます。

一方、西川刑事は、じっくりと考慮しつつ合理的に動こうとする慎重派でもあります。常に仕事のことが頭にあり、家でも書類を読みこんでいるため、家族へのサービスがおろそかになっているのです。

この作者の『刑事・鳴沢了シリーズ』は、父も祖父も警察官という刑事を主人公としたハードボイルドとも言える小説でしたが、本作はそれに比べると軽い作品です。とは言っても、この作家らしい丁寧な書き込みが為されているうえに文庫本で420頁もの長さありますから、普通に言う「軽く読める」小説とは少々その意味合いが異なります。この作者の他の小説に比べれば読みやすい、といった程度でしょうか。

不満があるとすれば、物語が少々ご都合主義的な様相を見せているところでしょう。沖田大輝の趣味が時計だというところはまだ良いのですが、二つの事件が少しずつ関連を見せてき始め、まさかそうはならないだろう、と抱いた懸念が的中すると、それまで感じていた本書に対する好感はかなり減ってしまいました。

ところが、そうして差し引かれた印象でもなお面白い小説であり、この二人が活躍する作品がシリーズとして読めることに期待しているのですから、私個人の波長にあっている作品なのでしょう。まるで人ごとのような書き方でありますが、それほどに堂場舜一という作家が私の好みに一致しているのです。

既に書いたように本作品を第一弾としてシリーズ化されており、2016年3月時点で6巻まで出ているようです。そのうちにゆっくりと読破したいものです。

ちなみに、西上心太氏の「あとがき」によると、本作品の舞台となる「警視庁追跡捜査係」とは架空の部署ですが、この作品が発表された2009年の11月に「特命捜査対策室」という未解決事件(コールドケース)を専門的に捜査する部署が設けられたそうです。

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