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浅田 次郎 霧笛荘夜話


今朝方の四時頃と五時過ぎの二回、軽い余震で起こされました。後で調べると我が家付近は震度2だそうです。寝ぼけていたためか、震度2だとは思えませんでした。でも昼間の余震についても自分が思った震度とはずれがあり、震度に対する感覚が鈍っているようです。

ところで本書。運河のほとりの古アパート「霧笛荘」の六つの部屋に住んでいた六人の住人について管理人の老婆が語る、全七編のせつなさあふれる短編集です。

「港の見える部屋」 星野千秋と名乗る女が来たのは横なぐりの雨が沫(しぶ)く嵐の晩だった。何度も死にそこねた末にこのアパートにたどり着いたらしい。そんな女の世話をしたのは、やがて彼女の隣人となる眉子という名のホステスだった。

「鏡のある部屋」 そんな眉子というホステスが住んでいたのが次の部屋だった。本名を「吉田よし子」というこの女は、二枚目の夫との間に二人の子をもうけ、経済的にも恵まれ、幸せを絵にかいたような結婚生活を送っていた。しかし、そんな家庭をあとによし子は家を出た。

「朝日のあたる部屋」 次の部屋の主は鉄夫という名の半ちくなヤクザ者が住んでいた部屋だった。眉子に可愛がられていた鉄夫は、その人の良さからすぐ上の部屋に住む四郎という売れないバンドマンのために一肌脱ぐことになる。

「瑠璃色の部屋」 バンド仲間と共に、すぐ上の足の悪い姉のおかげで北海道の田舎町から上京出来た四郎だったが、バンド仲間はすぐに行方しれずになっていた。そんな四郎に、隣の部屋に住むオナベのカオルは文句を言いながらも何かと気を使ってくれるのだった。

「花の咲く部屋」 札幌から集団就職でこの工場にやってきた花子は、その給料も先に上京していた一回りも年の離れた兄が前借りで持って行ってしまう生活だった。そんな花子が駆落ちの末に転がり込んだカオルの部屋は、馥郁たる香りが溢れるゼラニウムやブーゲンビリアの花園だった。

「マドロスの部屋」 終戦直前に遺書を書いたまま何の連絡もしていなかった恩師の娘のもとを訪ねた園部幸吉は、現実を前に途方に暮れるしかなかった。そして、復員後一年近くも着ていた軍服をマドロス服ひと揃いと取り換え、「霧笛荘」にやってきたのだった。

「ぬくもりの部屋」 山崎茂彦は「霧笛荘」の買収を担当して半年近くも成果を上げられないでした。山崎に特に目を掛けていた社長は買収費用として高額の資金を準備し、早急の解決を求めるのだった。

登場人物は連鎖していき、連作短編とも言えそうですが、それぞれの話は独立しています。

「霧笛荘」という一棟のアパートを舞台に、通常の「幸せ」な生活からはずれた人生を送らざるを得ない、「不幸せ」な人生を送っている人たちの織りなす人間模様を描き出した短編集です。

しかしながら、ここに暮らす人たちは自分の人生に一生懸命であり、自分に正直に生きようとした結果今の暮らしに落ち着いた人たちです。そこにはそれなりの幸せがあるといって良いものか、それは分かりませんが、浅田次郎は、通常の「幸せ」の基準とは合わない、自分の生に真剣に立ち向かう人々へエールを送っているようでもあります。

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