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深町 秋生 猫に知られるなかれ


やっと来月から落ちた瓦の修復に取り掛かれるかも、との連絡がありました。お墓も若干の修復が必要であり、屋根や壁、ブロック塀など合わせると、今後いくら位の見積もりが出てくるものか、頭の痛い日々です。それでも、家屋全壊や半壊のお宅が何件もあることを考えると、少なくて済んだと考えるべきなのでしょう。

さて本書ですが、「果てしなき渇き」で一躍ベストセラー作家になった深町秋生の、その後の活躍の舞台であるバイオレンス路線とはちょっと違う、終戦直後の日本を舞台にしたスパイ小説です。

第一章「蜂と蠍のゲーム」 終戦後の池袋。かつて泥蜂と呼ばれた元憲兵の永倉一馬は、陸軍中野学校出身の藤江から、緒方竹虎らがひそかに設立した諜報機関CATに誘われる。その藤江がまず持ちかけてきたのは、終戦時に起こされた襲撃事件の首謀者と目されている大迫元少佐がGHQのケーディスを狙っているというものだった。

第二章「竜は威徳をもって百獣を伏す」 毒物兵器の青酸ニトリールを持ち出していたらしい登戸研究所の元研究員であった闇医者が渋谷で死んだ。元諜報員の藤江忠吾は元陸軍少将岩畔豪雄(いわくろひでお)のもと、捜査を開始する。

第三章「戦争の犬たちの夕焼け」 戦時中、上海で作った特務機関の活動で大金を得、GHQ右派と組んでいる新垣誠太郎の会社が襲撃された。CATは犯行集団がシベリアに抑留されているはずの関東軍特殊部隊と突き止め、藤江と永倉は捜査に乗り出した。

第四章「猫は時流に従わない」 池袋駅前でGI相手に暴れていた永倉は幼馴染の香田徳次に出会い、今やっている仕事を手伝うように頼まれた。しかし、その仕事というのがどうもあやしいしろものだった。

この作家の、バイオレンス絡みの極道か警察の物語、という一連の流れからするとかなり雰囲気が違います。吉田茂や緒方竹虎なんぞという、戦後すぐの日本に実在した大物がちりばめられたスパイアクション小説なのです。それも、主人公の永倉一馬の活動を中心とし、永倉をスカウトした藤江らと共に日本再生を図る組織の一員となることを了とした男の物語なのです。ただ、スパイアクションとは言っても、諜報戦の側面よりもアクションが主だというのはこの作家ならではでしょうか。

だからと言っていいのか、これまでの深町秋生の小説のような、バイオレンスというスパイスの効いたたたみかけるような場面展開はこれほどのようにはありません。それは一つには、戦後日本を取り巻く政治状況や、闇市などに代表される力強く再生しようとする日本の雰囲気の描写などが入っているからでしょう。

また、本書の構成としては四つの「章」から成ってるのですが、実際は短編と言っても良い四つの物語から成っていることもその一因かもしれません。

それぞれの物語で戦争で負った傷を抱えながら苦しんでいる男たちが出てきます。その一人ひとりが負っている苦しみは永倉と同じであり、たまたま立場が異なるところにいるにすぎないともいえ、そうした男たちの物語でもあります。

本書はもしかしたらシリーズ化されるのかもしれません。本作は舞台設定が大掛かりな割には展開される物語が平板であり、せっかくの舞台が生きていない感じはします。しかし、この作者なら今後面白い物語ができそうだし、そうした作品が出ることを期待したいと思います。

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