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雫井 脩介 途中の一歩 (上・下)



「大人のための愛と勇気の物語」という惹句が書いてありましたが、端的に言って理解しがたい作品でありました。

漫画家の覚本とその悪友の長谷部、覚本の担当だった編集者の玉石とその知り合いの相馬らは、そろそろ恋人を見つけなければと、合コンを繰り返すのですがなかなか良い子は見つかりません。そんな中、覚本の現在の担当編集者である西崎綾子をきっかけに、男どもと同様に自分の年齢に焦りつつ合コンを繰り返すOLの松尾奈留美や、現役の人気漫画家である緑川優、そのアシスタントの紗希、それに綾子自身という女子組は、覚本ら男どもとの間で、思いもかけない恋の綱引きが始まります。

これまで読んできた雫井就介の小説を思っていたら足をすくわれました。ミステリーは勿論、恋愛小説でも読みやすくていながらも読み応えのある作品を発表してきた作家だと思い期待して読み始めたのですが、残念な結果でした。

この作家にしては人物の造形が中途半端な気がします。主人公の覚本はまあ、そこそこ描いてはあるのですが、友人の長谷部は合コンの場面にしか存在感がないし、世間知らずの上から目線の相馬は結局学歴を強調する意味がよく分かりません。まあ、外の登場人物にしても、この作家の他の作品に比べると存在感がありません。

登場人物の仕事振りにしても、漫画家の仕事内容など興味を持てそうではあるのですが、表面的にしか描いてなくてこの点でも物足りません。恋愛ものとしても小さな世界で完結するだけで心に響きません。コミカルな展開なのでそれも当り前かと思っていると、ストーリー自体に興味がもてていませんでした。

このように思うのは、私が恋愛ものが得意ではないから、という理由だけではないと思うのですが、ネット上で評判を見ると、私同様にこれまでの雫井作品とは異なり面白さはない、との評価が散見されつつも、この作品なりに面白いとも声も少なからず見られました。

結局、作家は何を言いたかったのでしょう。「人生で大事なのは、途中の一歩なんですよ。始めの一歩よりありふれているから気づかないけど、自分次第で特別な一歩になる」というセリフを言わせています。タイトルもこの言葉からとっているところからすると、この点を言いたかったのでしょうか。

確かにこの作家の作品らしく読みやすいのは事実ですし、テンポが悪いわけでもありません。そうすると個人的な好みの問題に帰着するのかとも思われます。それでもなお、雫井作品としては高い評価をつけるわけにはいきませんでした。

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