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あさの あつこ バッテリー


野球を舞台にした青春小説の名作と評判も高く、あさのあつこの代表作と言っても良い作品でしょう。全六巻で、野間文芸賞も受賞しています。本文の全部の漢字には振り仮名を振ってあり、一応は児童文学と銘打ってあります。しかし、内容は十分に大人の鑑賞に耐えうる作品だと思います。

野球には過大と言っていいほどの自信を持ち、他者のことは自分のプレーに利するか否かという価値しか認めていない天才原田巧は、親の都合で岡山県の新田という町に引っ越し、そこで永倉豪という少年と出会い、彼とバッテリーを組むことになる。少しの運動で発熱する、体の弱い少年である弟青波らと共に過ごす巧。田舎町での少年たちの成長を描く青春記です。

このところハマって読んだ『弥勒シリーズ』の作者でもあるあさのあつこの代表作を読まないわけにはいかないだろうと、映画化、コミック化と書名はよく聞くものの、児童書ということで読んでいなかった本書を手に取って見る気になりました。

本書だけに関して言うと、ネットでコミック化された作品を一巻だけ読んでいたので、そのあらすじは大体知っていました。でも、やはり原作は別の作品だと改めて思いました。この作者の上手さが目立つ作品だったのです。

内容自体は目新しいものではなく、プライドばかり高く、高慢な少年が、田舎の純朴な少年たちとの野球を通した交流によって、少しずつ他者との心のつながりの大切さを自覚していく、そして、野球そのものも上手くなっていくという物語なのでしょう。しかし、なによりも『弥勒シリーズ』でも見せた人物の内面描写の巧みさは、本書でも十二分に発揮されています。

巧の祖父が野球監督経験者で巧を見守る存在として配置してあり、弟青波が巧の良心としての位置付けではないでしょうか。巧の祖父や弟に対する心情がさまざまに揺れ動き、読み手もまた巧の心の振れ具合に振り回されそうになるのです。

読み手にとり、主人公の巧少年の傲慢さはとても鼻につくもので、ひねくれたその考えはときには嫌悪感さえ感じるほどです。そこに弟の青波が、繊細な心の持ち主として巧の傲慢さに対しチクリと一刺しし、豪は過剰なばかりな優しさを持って巧に接し、同級生ではありますが、巧を上手く補う存在として配置されています。

登場人物のそれぞれは誇張されすぎた人格だと思わないことも無いのですが、本作品の対象が児童だということを考えると、ある程度デフォルメされた人物のほうが良いかもしれないと思いなおしました。

全六巻のうちのまだ一巻目です。これから更に紆余曲折があり、巧も豪も、そして青波もゆっくりと成長していく姿が描かれていくのでしょう。

児童文学ではあるのですが、これはこれでまた楽しみな作品ではありました。

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