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高田 郁 蓮花の契り 出世花


高田郁のデビュー作である『出世花』を第一作とする物語の完結編です。

「ふたり静」 第一巻の『偽り時雨』に登場した女郎の’てまり’が再び登場します。大火により「かがり屋」は焼け落ち、てまりは行方不明のままであったが、とある場所でお縁こと正縁はてまりをみつける。しかし、そこでは香弥と呼ばれており、かつての記憶を失っているようだった。記憶を取り戻すてまりは身を引こうとするが、てまりを香弥だと思いこんでいる認知症の富路をおいては行けず、息子の与一郎も共に引きとめるのだった。

「青葉風」 正縁が半年という約定で桜花堂に寄宿しているときに、桜花堂の得意先である遠州屋の主人治兵衛が急死し、桜花堂の菓子による毒殺の嫌疑をかけられて桜花堂主人の仙太郎が捕縛された。正縁は桜花堂のためにも治兵衛の死の真相を解明しようとするのだった。

「夢の浮橋」 桜花堂主人の仙太郎と女将である染との仲は回復不能になり、染は実家に帰ってしまう。桜花堂の大女将で正縁の実母でもある香は、仙太郎と正縁との縁組を望む。そんな折、仙太郎と共に深川八幡宮の祭礼に向かう途中、正縁は永代橋の崩落の現場に遭遇するのだった。

「蓮花の契り」 永代橋崩落事故の際の死者に対する正縁の姿が生き仏として評判となった。しかし、人心を惑わすとしてお上の不興を買い、青泉寺は閉門となってしまう。一方、正念には還俗と正縁と夫婦になる話が持ち上がっていた。


死者の湯灌をその職務とする三昧聖を主人公とするこの物語は、当然のことながら物語の全編に「死」をまとわりつかせた話になっています。それでもなお、過多な感傷に陥ることなく文章が紡がれていくのは、作者高田薫の力量によるものでしょう。

最後になって正念と正縁との恋模様が描かれているのですが、この点については少なくないレビューで批判的に書かれていました。どちらかと言うと私も同意見で、これまで作り上げられてきたこの物語が通俗的になったような気がしたものです。

この点は個人の好みの問題が多分に反映するところではあると思われ、その点の指摘にとどめておきます。

ともあれ、丁寧に丁寧に物語を紡ぎだしていくこの作者の作風はデビュー当時から変わらず、本書においてもそのことは変わりません。情感豊かな情景描写でありつつ登場人物の心象をも表すという、物語作家の当然のこの技量が高田郁は特にうまいと感じられ、個人的な不満点はありつつも、こころやすらかなひと時を持てる物語です。

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