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渡辺 容子 罪なき者よ、我を撃て


あい変らず細かな余震が続いている我が郷土ですが、今度は台風12号が直撃しそうです。私が住んでいるあたりは屋根のブルーシートもあまり見られなくなりましたが、最も被害のひどかった御船などは今だ手つかずのところさえあると聞きます。ニュース映像で見てもその状況は悲惨です。そこに台風が来ればひとたまりもありません。被災者の方々の心配、はっきり言えば’恐怖’はかなりのものでしょう。何もできない身を悔しくも思います。

さて本書。以前読んだこの作家の『エグゼクティブ・プロテクション』は女性ボディガードの八木薔子を主人公とするエンターテインメント小説でした。本書は八木薔子と同じ会社の同僚である二ノ宮舜を主人公としたエンターテインメント小説で、八木薔子シリーズのスピンオフ作品という位置づけです。

『結婚式を中止せよ。さもなくば、惨劇が起きる』。警備保障会社に勤める二ノ宮舜は、アダルトグッズ会社社長の義娘、風間小麦の警護を任された。社長夫妻が挙式した数時間後、同会場で花嫁が脳幹をライフルで撃ち抜かれ死亡する。式の後、小麦は舜の目をかいくぐり、義父の経営する工場に潜入しようとする。その翌朝、小麦の自宅に一発の銃弾が撃ち込まれた。江戸川乱歩賞作家入魂のボディガード・ミステリー!(「BOOK」データベースより)

この人の作風はどことなく大沢在昌を思わせます。ただ、大沢在昌ほどのアクション性は無いところが違いと言えば違いでしょうか。

「八木薔子シリーズ」はボディガードを主人公とした小説ですが、ボディガードという職務内容の描写もかなり詳細です。その描写の詳しさから、今の日本でもこうした身辺警護が実際あるのではないかとさえ思ってしまいます。本書中で二ノ宮舜らは銃器の知識も詳しく、実際発砲事件に際しての素早いガードもあるのです。でもまあ、現実にはこうした事案は無いでしょうから、虚構の物語作りのうまさという点でも大沢在昌に似た印象を持つ所以かもしれません。

このようにエンターテインメント小説としての面白さは十二分でした。本来は、警護対象者の安全を図ることこそ任務とするプロのボディガードが、脅迫状を出した犯人を捜し出すなどということはあり得ない筈です。でも、そこはガードの方法論として、究極的には警護対象者を狙う者がいるのならばその相手を撃滅するのが警護を十全に果たすことになる、という論理ですりぬけます。まあ、それは警護象者は特定の者からしか狙われないという前提が必要ですが、この際そこまでは言わないこととしましょう。

少しだけ文句をつけるとすれば、本書はとある少女との出会いの場面から始まるのですが、たまたまその後の仕事の対象者が今回の警護対象者だった、というところから物語の本筋に入ります。しかし、「偶然」という事柄が物語に入ってくると、物語のリアリティが無くなってしまうと感じ、どうしてもなじめません。

更に言えば、警護対象者が高校生であり、主人公がその高校生を恋愛の対象としている点もマイナス要因でした。せっかく、プロのボディーガードのリアリティをきちんと描き出しているのですから、高校生を対象とする恋愛はやめてほしかった。百歩譲って、高校生に惚れるだけの状況を描いてほしかった。

とはいえ、こうした印象はかなり個人的嗜好に近いものでもあるでしょうから、この点は差し引いて物語自体の面白さを見ると、エンタメ小説として十分な点数をつけることはできると思います。

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