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誉田 哲也 武士道ジェネレーション


誉田哲也の「武士道」シリーズの第四作目であり、最終話です。磯山香織と西荻早苗という対照的な二人の剣道に掛ける青春を描いた物語ですが、大学を卒業してからの二人の姿がこれまでと変わらずにテンポよく語られています。

まず早苗の結婚式での香織の文句の場面から幕を開けます。早苗の結婚という意外性のもと、披露宴での席だというのに、何よりも「腹が減っている」との香織の存在が、この二人を上手く示しています。これまでの三作で二人の高校時代が描かれてきたのですが、本書では大学をも卒業し社会に出た二人が描かれています。

これまでこの作者が描いてきたホラー感満載の『アクセス』や、スプラッター的描写に満ちた『ブルーマーダー』のように、太陽に背を向けたような闇の雰囲気の濃い作品との差に改めて驚かされます。

勿論、剣道が物語の中心にあります。ただ、早苗は足の故障で剣道からは遠ざかっており、剣道そのものにはもっぱら香織がかかわっているのです。でも早苗にしても東京の大学に進学した後、就職も母校(東松学園)に決まっていて、桐谷道場の経理なども見るという形でかかわっています。何より、早苗の旦那が桐谷道場の高弟であって、香織に重大な稽古をつけるのです。

この稽古が古武道の流れを汲むもののようで、「シカケ」「オサメ」の練習を体中あざだらけになりながら行います。もっぱら武道にいそしむのは香織の役目として描かれる本書ですが、早苗には別な役目が割り振られているようです。

それは本シリーズの中ではめずらしい社会的視点です。それはアメリカとの間で戦われた第二次世界大戦のことであり、また韓国との間の慰安婦の問題であったりするのです。それらについての議論の中で叩きのめされる早苗ですが、これらの議論の延長線上には「力」の存在が見据えられているのです。

勿論最終的な目標は「平和」です。その平和を獲得、維持するためには圧倒的な「力」があって初めて可能だという考えがあり、本書は基本的にこの考えのもとにあります。少なくとも私はそう読みました。早苗がつい熱を帯びてしまう戦いについての議論も、本書で語られてきた「剣道」のあり方に強く結びついた話でした。

こうした「力」についての考えには多分強い異論もあることだと思います。しかしながら、本書を強く貫くこの考えのもとに、実に未来志向の明るい青春小説を仕上げていること自体は、強く惹かれるものを感じました。面白い小説を欲する読者の欲求に見事にこたえた一冊だと思います。

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