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柚月 裕子 朽ちないサクラ


佐方検事シリーズの柚月裕子による、県警広報広聴課の事務職員の女性を主人公とする警察小説で、タイトルの『朽ちないサクラ』から想像できるテーマそのままに描かれているミステリーです。

米崎県警平井中央署生活安全課が被害届の受理を引き延ばし、慰安旅行に出かけた末に、ストーカー殺人を未然に防げなかったと、新聞にスクープされた。県警広報広聴課で働いて4年、森口泉は、嫌な予感が頭から離れない。親友の新聞記者、千佳が漏らしたのか?「お願い、信じて」そして、千佳は殺された。大藪春彦賞作家、異色の警察小説。(「BOOK」データベースより)

県警広報広聴課に勤務する森口泉は、親友である新聞記者の津村千佳に慰安旅行のことをうっかり漏らしてしまっていたため、スクープされた情報源は自分ではないかと疑っていました。しかし、千佳は自分は誰にも漏らしてはおらず、「この件には、なにか裏があるような気がする」という言葉を言い置いて別れた後、殺されてしまいます。

泉は平井中央署生活安全課に所属する警察官の磯川俊一の力を借りて親友の死の謎を解き明かそうとするのです。

事件は2012年に千葉県警で実際に起きた事件をもとに書かれたものと思われます。とは言っても、相談を受けた警察が被害届受理を先延ばしにした、という舞台設定を借りたと思われるだけで、あとは作者の創作によるものです。

やはりこの作者の物語はそれなりの読み応えがあります。「それなりの」と書いたのは、若干の不満があるからです。

まず第一点。これは不満として取り上げるほどのこともないのですが、主人公の女性を警察官ではなく事務方にした理由がよく分かりません。この作者が尊敬するという横山秀夫の作品で、警察内部の一般的ではない部署を表に出していますが、そこではその部署であることに物語の必然性を持たせています。でもこの物語ではそういう点では必然性はありません。ただ、物語の締めとして泉の為した決心がかかわると言えないこともなく、これを書きたかったというのであれば話は別です。ならばもう少し事務方と設定した理由を書いてほしかった。

そして第二点、これが大きい。読後にネット上のレビューを読むとどうも同様の印象を抱かれた方が多いようです。それは、ネタバレになるのであまり詳しくは書けませんが、本書の事件の犯人像と言いますか、事件解決の処理の仕方が素直には受け入れることのできないことですね。

当初から荒唐無稽なアクション小説であるのであれば格別、本作品はそれなりのリアリティを持っているミステリーとして書かれているために、本書の結論は受け入れにくいのです。せっかくの面白い物語が最後でしぼんでしまいました。

まあ、一番目の理由は私の個人的な好みにもかかわることなのであえた書くほどではないことかもしれません。でも、二番目の理由は物語の根幹にかかわることでもあります。この点だけが残念ではありましたが、基本的にこの作家の紡ぎだす物語はエンターテインメント小説としての面白さを期待でき、またその期待に十分に応えてくれる物語だと言えます。今後の活躍にも期待したいです。

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