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月村 了衛 槐(エンジュ)


典型的なアクションエンターテインメント小説です。

弓原公一が部長を務める水楢中学校野外活動部は、夏休み恒例のキャンプに出かけた。しかしその夜、キャンプ場は武装した半グレ集団・関帝連合に占拠されてしまう。彼らの狙いは場内のどこかに隠された四十億円―振り込め詐欺で騙し取ったものだ。関帝連合内部の派閥争いもあり、現金回収を急ぐリーダー・溝淵はキャンプ場の宿泊客を皆殺しにし、公一たちは囚われの身に…。そのとき、何者かが関帝連合に逆襲を始めた!圧倒的不利な状況で、罪なき少年少女は生き残ることができるのか!? (「BOOK」データベースより)

先日読んだ、同じ月村了衛作品である『ガンルージュ』と同じ話だ、というのが第一印象です。端的に言って、これまで読んだ月村作品の中では一番手抜きの作品でした。

両作品共に、普通の一般人として生きている女性が、実は戦いの中に身を置いていたという設定です。そしてその世界で名の通った闘士としての過去を持つヒロインが、圧倒的な暴力の前に殺されそうになる子供たちを助ける、という話です。

『ガンルージュ』の時も月村了衛作品としての意外性を感じたのですが、本作品での意外性はそれ以上です。『ガンルージュ』のときは舞台設定の意外性が一番にあり、次いでアクションエンターテインメントとしての作風の変化に対する意外性でした。

本作品の場合、作風の変化に対する意外性というよりも、舞台設定の安易さをまず感じたのです。中学生の野外活動のときに半グレ集団に襲われ、キャンプ場に来ていた客の全員が殺される、という始まり自体、相当に安易であり、且つ無茶すぎます。百歩譲ってこの前提を受け入れるにしても、その後の展開がまた受け入れがたいのです。読み進むにつれ、いくらなんでもそれは無いだろう、という感情移入できない舞台設定のオンパレードでした。

『ガンルージュ』のときはそれなりに遊び心を持って単純に楽しめばいい、というスタンスでいることができたのですが、本作品の場合はその余裕すらありません。出版年月を見ると本作品のあとに『ガンルージュ』が書かれています。ということは、同じ路線の作品であっても書き方が上手くなったと思っていいのでしょうか。

月村了衛という物語の背景の構築が緻密で丁寧に為されていることが魅力の一つであるのに、物語世界が手抜きとしか感じられなくては感情移入などという以前の話です。

とても淋しくなる物語でした。『機龍警察』のときの月村了衛はどこに行った、と言うしかありません。せめて最低限『ガンルージュ』ほどには、遊び心でもいいので逃げ道を作っていてほしかった。それほどに残念という他ない作品でした。

そうした舞台設定の無茶を無視すればアクション小説として読めないことはありません。それは、物語の展開はテンポ良く読めるというだけのことであり、物語の否定になってしまうのですが、そう言いたくなる程にこの作者は文章もうまいし、残念としか言いようが無いのです。

今回は批判だけの文章になってしまいました。でも、この物語を「衝撃的な面白さ」だという人もいるのですから、個人の感想はいろいろです。私としては、月村了衛らしい作品に出会うのを期待して、他の作品を読み続けようとは思います。

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