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安生 正 ゼロの激震


一言で言えば、パニック巨編ということになるのでしょうが、これまでのこの作家の作品からすると首をひねらざるを得ない長編小説でした。

金精峠で土砂崩れが起こり、足尾町の人々は原因不明の死を遂げ、富岡では大火災が発生するなど、関東北部では未曾有の大災害が頻発していた。そんな折、元大手ゼネコン技術者の木龍のもとに、奥立という男が訪ねてくる。すべてはマグマ活動にともなう火山性事象が原因で、これ以上の被害を阻止すべく、技術者としての木龍の力を借りたいという。だが、彼の協力もむなしく大噴火は止められず、やがてマグマは東京へと南下していく―。地球規模の危機に技術者たちが挑むパニック・サスペンス巨編!(「BOOK」データベースより)

関東を吹き飛ばすだけのリアリティを持たせるためには、学術的な理論の裏付けが必要だとして小難しい理屈を並べてあるのでしょうが、エンターテインメント小説としてそこまで必要だったかは疑問です。

同様の舞台設定の作品として日本そのものを海の底に沈めてしまった小説があります。小松左京の『日本沈没』です。この作品は本作の上を行く舞台設定ではありましたが、日本が沈むその学問的理由付けは最低限のものでした。読者が日本が沈むという設定を受け入れるに必要最小限のものだったのです。

本書はそうではなく、説明が過多です。代わりに、描かれているべき人間の描写があまりありません。主人公の木龍でさえクライマックスに至るにつれ、陳腐さのみが鼻についてきました。ですから、それまで理詰めで行動しているはずだった香月が破綻した行動を取るなどの不可解な行動も出てきてしまうとしか思えません。

今、日本では『シン・ゴジラ』が大ヒットしているそうです。私はまだ見ていないのですが、この映画の見どころの一つとして政府側の人間の描写がよく描かれているという点があるように聞きました。未曾有の大災害に際してこの国のかじ取りをする人たちを描いてこそ、ゴジラに立ち向かう人間のリアリティが描かれると考えられたのでしょう。

残念ながら本書はそうではありません。行政の動きは背景でしかなく、各大臣はステレオタイプです。この作者のこれまでの作品から、本書もかなりの期待を持って読んだことが裏目に出たようです。ハードルを上げに上げて読み始めたので、その反動は大きなものでした。

蛇足ながら一言。熊本地震を肌で体験した身としては、この手の小説は読みにくいかと思っていましたが、それほどでもなく、わりと客観的に読めたように思えます。私の住んでいる地域でも震度6強もあった熊本地震ですが、あの揺れを体験した後で本書は逆にリアリティを感じなかったのかもしれません。

その後各地で地震が続き、昨日は鳥取県で最大震度6弱という地震がありました。日本各地どこで大きな地震があってもおかしくないこの頃です。タンスの転倒防止など身近なことからでいいです。地震対策は十分に取られるよう願います。

トイレ用に湯船に水をためておくなど、この小さな対策が現実にはなかなり大きな対策なのですよ。

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