長岡 弘樹 教場 2


教場』に続き風間公親教官を配した、警察学校を舞台にした連作のミステリー短編集です。「風間公親教官を配した」というよりは、風間公親教官ありきの物語ですので、教官風間公親シリーズとも言えそうな物語です。

●第一話 創傷(そうしょう)
初任科第百期短期課程の桐沢篤は、風間教場に編入された不運を呪っていた。医師から警察官に転職した桐沢は、ゴールデンウイーク明けに最初の洗礼を受ける。
●第二話 心眼
風間教場では、備品の盗難が相次いでいた。盗まれたのは、PCのマウス、ファーストミット、マレット(木琴を叩く枹)。単独では使い道のないものばかりだ。
●第三話 罰則
津木田卓は、プールでの救助訓練が嫌でたまらなかった。教官の貞方は屈強な体格のスパルタ教師で、特に潜水の練習はきつい。本気で殺されると思ってしまうほどだ。
●第四話 敬慕
菱沼羽津希は、自分のことを初任科第百期短期課程のなかでも特別な存在だと思っている。広告塔として白羽の矢が立つのは、容姿に秀でている自分なのだ。
●第五話 机上
仁志川鴻は、将来の配属先として刑事課強行犯係を強く希望している。元刑事だという教官の風間には、殺人捜査の模擬実習を提案しているところだ。
●第六話 奉職
警察学校時代の成績は、昇進や昇級、人事異動等ことあるごとに参照される。美浦亮真は、同期で親友の桐沢篤が総代候補と目されるなか、大きな試練に直面していた。(「内容紹介」より)

前作『教場』がかなりの面白さを持っていたため、本作もそれなりの期待をして読み始めました。結果は、面白かった、の一言です。個人的には前作よりも物語が練れている感じはしました。特に、学生同士や教官の為す暴力が全くと言っていほどに影をひそめており、よりリアリティを感じもしました。

著者のインタビューを読むと、前作のときは警察学校の「取材が叶わず「数少ない文献で知識を仕入れて」描いた警察学校」だったらしく、「実際に取材すると、いまの警察学校では暴力はご法度。その話が頭にあったので、バイオレンスなシーンは前作と比べたら抑えられているのでは」と述べられています。(「ほんのひきだし インタビュー 参照」)

表題作が第61回日本推理作家協会短篇賞を受賞された、この作者の短編集『傍聞き』を読んで思ったことでもあるのですが、細かな仕掛けがうまい作家さんですね。著者自身「アイデア小説」が好きだととのことで、資料を良く読みこまれた上で「短編は余計なものをそぎ落として、アイデアを際立たせる形式」として執筆されているそうです。

傍聞き』や前作の『教場』そして本書それぞれにアイデアが十分に生かされていて、風間教官のこの言葉はここに結びつくのか、など、読んでいて「うまい!」と思わされる個所が随所にあるのです。

意外性、を持つ物語。その最たるものは最後の「奉職」でしょうか。この物語の最後に語られる風間教官の一言を書きたいがためにこの物語はあったと思われるほどでした。

どうも続編がありそうです。楽しみに待つ作品がまた一つ増えました。

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