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辻堂 魁 月夜行 風の市兵衛


風の市兵衛シリーズの第四弾です。

お家騒動で揺れる出石藩の姫君が江戸市中で命を狙われた。武蔵国等々力村に身を潜めた姫の護衛に選ばれたのが、算盤侍の唐木市兵衛。美貌の上に天衣無縫な姫君、初めての市井の暮らしに目を輝かせるが、農民の困窮に心を痛める。そして無謀な行動に出たことから敵方に知られることに。月光の下、殺到する刺客に“風の剣”を振るい立ち向かう市兵衛と姫の運命は。(「BOOK」データベースより)

一年半ぶりに本シリーズを読んだのですが、思いのほかに面白く読みました。この物語の持つ世界観が私の好みと合致するのです。

一年半前には、せっかく「渡り用人」という独特なキャラで経済の面から江戸の市井を描くという特色を出しているのにもったいない、と書いているのですが、読まずにいた期間が良い方に作用したのか、本書でも「渡り用人」という独特なキャラは行かせてはいないものの、剣士としての唐木市兵衛の活躍そのものが面白く、私の琴線に触れました。

解説をしている文言評論家の菊池仁(めぐみ)氏によると、一巻目から順に「逆境の少年との交情、自らの哲学に殉じた商人、チームワークの核となる絆を順次描くことで、市兵衛の人物造形に深みを加えてきたの」だそうです。そして、本書の「おのれの果たすべき役目を曇りなく果たす心構えをお持ちの方、己の節操に忠実なお方」という依頼に応えるべき人物造形を為してきた、と言われています。

確かに、「渡り浪人」というキャラクターこそ影をひそめているものの、代わりに「風の剣」の使い手としての市兵衛の姿が浮かび上がってきています。そして、この剣の使い手としての市兵衛の姿が実に魅力的ではあるのです。そしてその魅力的であるキャラクターを、辻堂魁という作者の文章が、登場人物の心情も、その場の情景も心地よく描き出しています。

主人公の唐木市兵衛とその兄で公儀十人目付の片岡信正、そして兄信正の配下でありながら市兵衛が気になって仕方がなく、市兵衛の親友だと自称する返弥陀之助などの存在も、この物語を魅力的に見せているのはこれまでと同様です。彼ら、幕府の高官という後ろ盾がある、ということも、痛快時代小説としての面白さの条件を満たしていると言えそうです。

その意味では、解説の菊池仁氏が言うように、市兵衛が思い切り動き回ることのできる環境をこれまでの各巻において作り上げてきているということはできるのでしょう。そして、これからさきもこの設けられた舞台のうえで市兵衛が動き回ることでしょう。

2016年の10月の段階で、このシリーズも十八巻も出ているようです。それだけの人気シリーズになっているということでしょう。

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