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辻堂 魁 天空の鷹 風の市兵衛


風の市兵衛シリーズ第五弾です。

高砂が流れる北相馬藩江戸藩邸で、勘定人・中江作之助が斬殺された。算盤侍“風の市兵衛”は、病死と報された息子の死に疑念を抱き、出府してきた老侍・中江半十郎と知り合う。やがて遺品の勘定書を託された市兵衛は、それが藩を壟断する一派の悪行が記された物と気づく…。かつて“相馬の鷹”と呼ばれた老父とともに、市兵衛は卑劣な罠が待つ藩邸へと向かう。長編時代小説書下ろし。(「BOOK」データベースより)

人情時代劇ここにあり、という言葉を地で行く、心温まる、それでいて痛快な、今のところではこのシリーズ一番の面白さを持った物語でした。

本編の中心となる人物の元北相馬藩士中江半十郎と市兵衛との出会いの場面や、その後の半十郎を引き連れた両替商での一幕など、人情痛快物語の面目躍如たる場面が続き、一気に物語の中に引き込まれました。

加えて、本書では本シリーズ最大の特徴である、「渡り用人」であるという主人公唐木市兵衛の特色を最大限に生かす状況が設けられていて、その上で、社会の経済を仕組みをよく知る市兵衛にその仕組みを解説までさせているのです。何も知らない半十郎に対しての説明はもちろん読者に対しても同様であり、それは読者の知識欲も満足させてくれるものでした。

それは、年貢米と商人の米相場の仕組みの説明であり、現代社会でもなかなかにその仕組みが分かりにくい世界ではあります。

その上で、相場の仕組みについて全くの無知である半十郎に対しての姑息な仕打ちを懲らしめる場面は、痛快小説の一番の見せ場の一つでもあり、事実この場面は実に爽快で心地よいものでした。実際は、この場面は知識において悪辣な相手をやりこめる痛快さであり、市兵衛の剣による痛快場面はまた別にクライマックスとして用意してあるのですから、読者としてはこれほど喜ばしいものはないのです。

「渡り用人」という市兵衛の実力を十分に見せつけてくれる本作品は、このシリーズの中でもベストと言っていい面白さを持った作品でありました。

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