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辻堂 魁 風塵(上・下) 風の市兵衛



風の市兵衛シリーズ第八弾です。

師走のある日、蝦夷地での恨みを口にした何者かによって元松前奉行配下の旗本が射殺される。その賊は蝦夷地に入植した八王子千人同心の関係者であり、元老中の奥平純明も襲撃対象になっていることが疑われていた。その頃、市兵衛は例のごとく宰領屋の矢籐太の頼みから、奥平純明の側室お露と二人の子の警護役をすることとなった。

今回は蝦夷地開拓へと話は広がり、スケールの大きな舞台となるとの印象でした。しかし、実際は今回の敵役の人物背景としての蝦夷地開拓であり、思ったほどの話の広がりはありませんでした。

しかし、それは私の個人的な好みの話であり、蝦夷地での屯田兵らの苦労話はそれなりによく調べてあって、舞台背景としては納得のいくものではありました。ただ、そのほかの竹村屋雁右衛門絡みの話には、詳しくはネタバレになるので書けませんが、若干無理があるのではないかという印象はぬぐえません。

それでもなお、このシリーズの面白さは少しも損なわれることなく展開しています。上下二巻、約六百頁弱という大部の物語になっていますが、その長さを少しも感じさせない面白さであるのはさすがです。市兵衛と側室のお露親子との交流や、いつもながらの剣戟の場面など見どころは満載です。

蝦夷地に八王子千人同心という侍たちが入植していたというのは全く知らないことではありましたが、これは歴史的事実であり、八王子千人同心のことは八王子市(八王子千人同心の歴史|八王子市 :: 参照)や北海道苫小牧市(八王子千人同心/北海道苫小牧市 :: 参照)のホームページにも掲載されています。

彼ら千人同心の怨念が幕府に向けられ、ときの老中奥平純明の殺害を企てる、という設定のもと、奥平本人ではなく、その側室と子らの護衛を市兵衛が行うという流れも上手いと思います。この設定を設ける上で、老中まで務めたという大名に一介の素浪人が雇われるはずもなく、雇われるまでの経緯を御前試合の形式を設けて一つの痛快物語として仕上げている点もさすがでした。

こうした上手さの積み重ねこそが人気シリーズになっていく原因なのでしょう。


今年も大晦日になりました。私の住む熊本も二度の大地震に見舞われるなど、二度と経験したくもない大変な一年でした。しかし、あの震災の中でも家族や仲間が皆元気で過ごすことのできた幸せをかみしめております。皆さまにもいろいろとご心配をいただきありがとうございました。あらためてお礼申し上げます。

また、多くの方に本ブログを訪ねて頂き、有難うございました。来る年もまたぼちぼち書いていこうと思っていますので、本年同様によろしくお願いいたします。ではよい年をお迎えください。

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