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長岡 弘樹 赤い刻印


傍聞き」で日本推理作家協会賞短編部門を受賞した長岡弘樹の短編集です。惹句には「長岡ミステリー史上、最も巧緻な伏線と仕掛け」とありました。しかし、私の読み方に問題あるのかもしれませんが、面白く読みはしたのですが、そこまで言うほどとは思えませんでした。


「赤い刻印」
「傍聞き」に登場した羽角啓子、菜月親子が登場します。啓子から思いもかけず、お祖母ちゃんは生きている、と聞かされた菜月は、祖母チサのいる老人ホームに行くが、冷たくありらわれてしまう。しかし、時を経るにつれ心が通い、思いもかけない事実が浮かび上がってくる。

「秘薬」
K女子大医学生の水原千尋は、記憶障害を患い、記憶が一日しかもたなくなってしまった。千尋の担当である教授の久我良純は、千尋に一日の記録としての日記をつけるように言う。だが、いつの間にかバインダー式の日記の頁が入れ替わっていた。

「サンクスレター」
息子が自殺した原因を調べるよう要求する父親葛城克典は、授業中の教室に押し入り、直接子供たちを問い詰めようとするのだった。担任である城戸万友美は、葛城に対しある言葉を言う。

「手に手を」
認知症の母鈴子と、精神に障害のある弟の久登の面倒を見て婚期を逃してしまった和佳は、歩道橋で突然誰かに触られたり、風呂場の手すりが外れていたりと、立て続けに細かな、しかし不思議な事件に遭うのだった。

私には、この四編の物語の中では「赤い刻印」が一番読みやすく、また分かりやすい物語でした。しかし、ネットで読んだ書評を見ると「サンクスレター」の完成度を高く評価してあります。

しかしながら、「サンクスレター」は、確かに仕掛けがうまいとは思うのですが、教室内での担任教師万友美と葛城とのやり取りに現実感を感じられませんでした。教室の中でパソコンで侵入者である葛城にメールを打つという行為はいかにも現実感がありません。普通はそれだけの余裕があれば外部に助けを求めると思えるのです。その点を除けば意外性や落ち着きどころなどは上手いと認めざるを得ないとは思います。

どの物語も、細かなところまで気をつけて読んでいないと伏線を伏線と気付かないほどに緻密に組み立てられています。それでいて、親子や家族、そして師弟間など、情感豊かな人間模様を描き出すのです。そうした仕掛けを見ると「最も巧緻な伏線と仕掛け」という惹句の文句も、売らんがための大げさな言葉とまでは言えないと思う作品集ではありました。

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