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米澤 穂信 氷菓


直木賞候補になった、フリージャーナリストの太刀洗万智を主人公にした小説『真実の10メートル手前』を書いた米澤穂信のデビュー作で、連作短編形式の長編ミステリー小説です。

神山高校の折木奉太郎は、姉の勧めで部員ゼロの古典部に入部する。しかし、そこには一身上の都合という理由で先に入部していた千反田えるがおり、成り行きから奉太郎の親友の福部里志や、長年の付き合いの伊原摩耶花も入部することになる。千反田の好奇心に引きずられ、日常の細かな謎を解明していた奉太郎だったが、失踪した千反田の伯父に絡む謎の解明を頼まれることになった。ところが、それは、古典部の『氷菓』という題名の文集に隠された秘密につながる事実が明らかになっていくのだった。

本書は第五回角川学園小説大賞奨励賞を受賞した小説だそうで、ネットでも面白い青春ミステリ小説だと紹介してあった作品です。確かに、舞台は高校であり、主人公も仲間もその高校の一年生で青春小説であることに間違いはありません。

しかしながら、冒頭から硬質な文章で綴られており、よくある青春小説とは趣が違うのです。例えば、殆ど冒頭に描いてある場面での一文の「俺は鼻を鳴らすことで肯定を示した。」などという文章を見ても分かるように、普通は使わないだろう言い回しを多用しています。

文章自体もさることながら、最初に示される、千反田が閉じめられていた謎など、なんとなくご都合主義的なわざとらしさが付きまとっているのです。そうした印象から、本書の序盤は作られた物語との印象が強く、何となく違和感を感じながら読み進めていました。

ところが、中盤あたりからどうも異なる印象を持ち始めました。本書のわざとらしさの印象は作者の意図だと思えてきて、大時代的言い回しも計算であり、そう考えれば登場人物の名前もそうした計算の上だと思えてきました。

本書の眼目である古典部の三十三年前の秘密もそうした舞台設定の中で生きていると思え、本書が少なくない場所で面白いと推薦されていることにも納得がいきました。

読後に著者本人による「あとがき」を読むと、「六割くらいは純然たる創作で」あり、そして「どうにもご都合主義っぽい部分が史実だ」と書いてありました。つまり、作者自ら「ご都合主義」ということを書いているわけで、私が感じた違和感も作者の思惑の中だったようです。

また、本書には続編が書かれており、それどころかシリーズ化されてベストセラーになり、またアニメ化され、更には実写映画化もされていると言います。近いうちに続編も読んでみようと思います。

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