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米澤 穂信 満願


全編が、ホラーと言うにはためらいがありますが、それでも、ほのかに恐怖感が透けて見える短編作品集です。


「夜警」
どことなく心休まらない印象の新人警官が配属された。彼はその心配の通りにけん銃を発砲し、襲ってきた相手を射殺しながらも、自らも殺されてしまう。しかし、彼は死の間際に、「こんなはずじゃなかった。上手くいったのに」と繰り返していた。
「死人宿」
やっと探し当てた佐和子は山奥の温泉宿にいた。しかし、そこは毎年一人か二人の死者が出る、『死人宿』と呼ばれる宿だった。そして、自分が止まっているその晩にも・・・。
「柘榴」
自他共に認める認める美しさを持ったさおりは、父の反対にもかかわらず佐原成海と結婚して娘を産み、夕子と月子という母親の美しさを引き継いだ二人の娘を産んだ。父親の言うとおり成海は生活能力が無く、さおりとは別れることになったが、成海は二人の子供の親権は譲らないというのだった。
「万灯」
井桁商事の伊丹は、バングラデシュの北東部の低地帯での天然ガスの開発を手掛けていた。問題は、その地方の拠点として最適なボイシャク村のアラムという男が開発に反対していることだった。そのボイシャク村からの呼び出しで赴くと森下という日本人がいた。
「関守」
都市伝説系の記事を書くために、先輩から教えられた「死を呼ぶ峠」の噂がある伊豆半島の桂谷峠に来た。しかし、小さな婆さんが一人いるだけの古びたドライブインが一軒あるだけであり、その婆さんから話を聞くしかないのだった。
「満願」
自分が弁護士になる前に下宿をしていた鵜川家の嫁の鵜川妙子が今日出所してきた。彼女は、一審で殺人の罪裁かれたものの、控訴を取り下げ服役していたものだった。何故、一審では争う姿勢を見せていたのに控訴審を戦わなかったのか、それが分からなかった。

米澤穂信という作家の作品を読んだのは直木賞候補作の『真実の10メートル手前 』、次いで『氷菓』という高校生が主人公の青春ミステリー小説で、その次が、『インシテミル』というゲーム性の強い本格派のミステリーです。そして本書なのですが、本書は人間の内面に深く踏み込んで心の裡を暴き出す、これまでとは全く雰囲気の異なる作品でした。

本書の受賞歴を見ると、第27回山本周五郎賞、第151回直木三十五賞候補、ミステリが読みたい! 2015年版 国内編1位、週刊文春ミステリーベスト10 2014 国内部門1位、このミステリーがすごい! 2015年版 国内編1位、第12回本屋大賞7位などとそうそうたるものです。

にも拘らず、個人的な好みからは若干外れていました。何せ暗い。そして重い。「夜警」や「柘榴」など、思わずうまい、と思ってしまう作品ももちろんあるのですが、特に「万灯」や「満願」などは読んでいる途中からミステリーとしての違和感を感じてなりませんでした。

「万灯」は主人公が犯した殺人が、意外な理由で暴かれてゆくその過程が仕掛けなのでしょうが、どうも納得できません。直木賞選考委員が言うような理由ではなく、個人として、小説の成り行きに違和感を持つのです。

それは「満願」も同様で、私が感じた違和感の正体は、これらの物語で提示したい「謎」が明確でないというところにあるのでしょう。

しかし、本書は個人的な好みからは少し外れていたにしても、『真実の10メートル手前 』のような作品を書かれるこの作者の作品は、良く練られていて読む甲斐があるということは言えると思います。今後も他の作品を読んでいきたいものです。

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本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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