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富樫 倫太郎 生活安全課0係 ファイヤーボール


なかなかにコミカルで、気楽に読むことができる長編の警察小説でした。

杉並中央署生活安全課に突如誕生した「何でも相談室」。通称0係。署内の役立たずが集まる島流し部署だ。そこへ科警研から異動してきたキャリアの小早川冬彦警部。マイペースで、無礼千万な男だが知識と観察眼で人の心を次々と読みとっていく。そんな彼がボヤ事件で興味を示した手掛かり、ファイヤーボールとは?KY(空気が読めない)刑事の非常識捜査が真相を暴くシリーズ第一弾!(「BOOK」データベースより)

富樫倫太郎という作家の作品は、新選組の土方歳三を描いた『土方歳三』しか読んだことが無く、活劇小説の書き手という印象しかありませんでした。

しかし、本書を読む限りでは実に読みやすい、それでいてそれなりの読み応えもある小説の書き手ではありました。

主人公小早川冬彦という男は、キャリアでありながら現場の仕事をしたいという思いを持っているずば抜けた頭の良さを持っている男ではあるのですが、頭の良さは対人関係には全く無関係のようで、人の心に無神経に踏み込んでいることにも気付かない人物、という設定です。

無類の運動神経の無さや対人関係の悪さなどから警察庁から科警研、即ち「犯罪行動科学部捜査支援研究室」に出向していた冬彦が、暇つぶしに警察の裏金問題についてのテレビや新聞の報道をもとに推論で書きあげたレポートがお偉いさんの目にとまり、レポートのことを忘れるという条件でかねてよりの念願の警察の現場に出ることになります。

そのために配属先の杉並中央警察署生活安全課に設けられたのが、杉並中央署の吹きだまりである「何でも相談室」です。ゼロをいくつ掛けあわせてもゼロのまま、というところから通称「0(ゼロ)係」と呼ばれています。

冬彦は四十歳になる巡査長のベテラン刑事である寺田高虎と組んで現場に出るのですが、この寺田という男が傍若無人を絵にかいたような男で、何かと冬彦に突っかかります。でも、冬彦には通じず、かえっていらいらする寺田です。

現場に出て早々に立ち小便に関する苦情や、認知症のお婆さんの保護、放火事案などに出会うのですが、これらの事案の陰に事件性を見る冬彦です。それに対し、あきれるほかない寺田でした。

こうした個々の事案の他に、杉並中央署には暴力団に情報を流している内通者がいるらしいということから、警視庁の監察室から二人の人物が派遣されてきていて、その捜査も続いています。

本書は通常の警察小説と異なり、軽くて非常に読みやすい作品です。それは冬彦を始めとする登場人物たちのキャラクター設定にもよるのでしょうが、とにかく深く考えずに読み進めることができます。プロファイリングの得意な冬彦の推理はことごとく外れますが、その後事実関係が明確になっていくにつれ、当初見当違いと思われていた冬彦の言葉が次第に現実化していく様子は小気味いいのです。

『土方歳三』で感じていたこの作家の特色の無さは本書で見事に覆りました。

本書には続編もあるようですし、また別のシリーズもあるようです。改めて読んでみようと思います。

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