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中山 七里 いつまでもショパン


岬洋介シリーズの第三弾です。今回はショパンコンクールの行われるポーランドのワルシャワが舞台の物語です。

2010年10月2日午前10時に国際ショパンコンクールの一次予選一日目がワルシャワ・フィルハーモニー・ホールで始まった。ただ、今年のコンクールは、4月の大統領専用機の墜落事故に続いて、5月の旧市街市場広場での爆弾事件、次いで7月の聖ヤン大聖堂のパイプオルガンに仕掛けられた爆弾事件とテロ行為が続く中で強行されたコンクールだった。そして、10月7日の一次予選最終日に事件は起きた。テロ特別対策本部所属の刑事であるスタニフワフ・ピオトル刑事が10本の全部の指が第二関節から切り取られるという状態で見つかったのだった。

本作品は、これまでの二作品とは異なり、ショパンコンクールという限定された期間の出来事が記されています。

ポーランドという国が、ロシアやプロイセン、オーストリアといった近隣の大国に呑みこまれながらも自国の独立を勝ち取ってきた歴史があり、ロシアによるワルシャワ侵攻に際して「革命のエチュード」などを書いたショパンという人物を産んだ国だからでしょうか、コンクール期間中のテロという卑劣な行為に対する抗議の意味も込めてコンクールの続行を決めます。

そうした中、コンクールへの参加者たちは平常心での演奏をしなければならないのですが、なかなか困難なことでした。そんな中、日本人参加者である榊場隆平と、そして岬洋介は大喝さいを受けるのです。

本書の主人公はヤン・ステファンスというワルシャワの少年で、彼の家系はショパンコンクールの準優勝者を出してきた家系です。彼にとって、コンクールでの優勝は至上命題でしたが、榊場隆平や岬洋介の演奏を聞くにつけ、自分の力量を思い知らされるのでした。

この主人公ヤン・ステファンスの視点で本書は進行していきますが、父親の言う「ポーランドのショパン」への疑問が頭をもたげ苦悩する様が描かれます。ここらは私たち素人にはよく分からないところですが、そうしたピアニストたちの音楽に対する感覚までをもこの作者は示してくれています。

ピアニストという人種を知らず、想像すらできない私にとって、ショパンコンクールがどのような意味を持つのかは分かりません。しかし、本書を読む限りはその心境がほんの少しですが理解できるような気がしてきました。そして、ショパンという作曲家についてのポーランドの人たちの思い入れや、ショパンという作曲家のクラシック界での特別な位置づけについてもほんの少しですが分かったような気もします。

ただ、本書を小説として評価すると、これまでの二冊に比べると面白さにおいては劣っていると感じました。あまりにも演奏者の演奏、楽曲の解釈についての描写が多すぎるのです。

更に言えば、クライマックスで描写される岬洋介の演奏の影響、効果についての描写は過剰すぎるのではないかと思われます。いくらなんでもという気しかしないのです。

とはいえ、決して小さくは無いと感じたマイナス評価はあっても、やはりこのシリーズのそれなりの面白さはありました。まだ続編があるようなので、続けて読んでみたいと思っています。

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