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今野 敏 マインド


警視庁捜査一課に属する碓氷警部補を主人公とする長編警察小説で、碓氷弘一シリーズの六冊目です。

同日の同一時刻に二件の殺人と二件の自殺という事件が起きる。だが、「刑事は偶然という言葉を嫌う」のだ。警視庁の田端捜査一課長もそうで、「同じ時刻に、四人の人間が死んだってことに、俺はどうもひっかかるんだ」という田端捜査一課長の言葉に、碓氷警部補の属する捜査第五係が捜査を開始することになった。

警察官であれば誰しも気になる「偶然」という言葉。同一時刻に四件の人死にが起きることの不自然さに、念のために捜査を開始する第五係です。

二件の殺人事件の被疑者に直接会ってみると殺したことを覚えていないと言い、どうも嘘をついているようには思えません。そこに藤森紗英もこの事件に関心があるとの話がもたらされます。同じ時刻に強姦未遂が二件、盗撮事件が一件起きているというのです。

この藤森の捜査への参加で話は一気に心理学の分野へと移行します。つまりは、藤森の心理学的見地からの意見が重要性を帯びてきて通常の警察小説とはその趣を異にすることになるのです。

本書を読んでいて、近頃の今野敏の小説にたまに見られることですが、会話文が多くなり、加えて情景描写があまり無いためか、何となく一場面ものの舞台上での役者の演技を見ているような印象を覚えることがあります。刑事達の多くの場面での聞き込みなど、場面の切り替わりの印象が薄くなり、登場人物たちの静的な印象だけが強くなるのです。

本書などまさにそうで、藤森の心理学的な説明に碓井を始めとする捜査員たちが聞き入り、人の動きを感じにくくなるのです。つまりは舞台上での会話劇さながらの印象を受けることになります。

勿論、今野作品の面白さはそれなりに持っているので面白くないなどと言うつもりはないのですが、『隠蔽捜査』などのような、警察官の動きと、心情とを緻密に読ませる作品とは微妙に印象が異なってくるのです。

四件の事案に何の関連性も見つからないなか、あるクリニックとの関連性が浮かび上がり、事件は一気に動き始めます。そこらあたりからは捜査員の動きも感じられるようにはなってきます。しかし、やはり藤森中心で動くことに変わりはなく、碓氷警部補の存在感も今ひとつです。そういう意味では、主人公の碓井警部補が一歩引いた物語だと言えるかもしれません。

ちなみに、警察庁の心理捜査官、藤森紗英は、シリーズ4冊目『エチュード』で登場している人物でもあり、その時も碓井警部補と組んでいます。

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