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畑野 智美 タイムマシンでは、行けない明日


梶尾真治をを思わせる、タイムトラベルもののSF長編恋愛小説です。

高校一年生の丹羽光二は、ロケットの発射をみるために、同級生の長谷川葵さんと待ち合わせをしていた。そこに車が突っ込み、彼女は車の下敷きになってしまう。彼女を救おうと、光二はタイムマシンの研究をするために仙台の大学へとすすみ、そこで思いもかけず、過去へと旅をすることになるのだった。

ある日の図書館での返却済みの本のところにあったこの本を見つけました。すぐに借りてきた次第です。

というのも、私いつも参考にさせてもらっている「第二級活字中毒者の遊読記」の焼酎太郎さんと、そしてもう一人、ひだまりさんのブログ「*ひだまりさん日記* ~晴れ 時々 読書とパン~」に面白いと紹介してあった作品だったのです。

端的に言ってお二人の言うように面白い作品でした。タイムマシンもの、パラレルワールドの話は小説でも映像でも山ほどあります。作品のネタとして、アイディアさえあればどれだけでも面白いものが欠けるということなのでしょうね。

しかし、そのアイディアが難しい。

畑野智美という作家の作品は始めてなのでよく分からないのですが、本書の一人称で描かれる文章はかなり客観的です。主観表現が無いという意味ではなく、物語の場面を主人公が俯瞰的に眺めており、それを描写しているという感じなのです。そして、わりと淡々としている短めの文章がたたみかけられています。

このタッチは読んでいて小気味いいです。この物語の後半になり、主人公も年をとり、あちこちに、それこそ本書の始まりから物語の全体にわたって振りまかれている伏線が回収されていくのですが、その折にはこの文章がゆっくりと染み入ってきます。

とくにラストは印象的です。宇宙センターにいた村上さんはおそらく事故した村上さんの子供ではないかとは、焼酎太郎さんのブログに書いてあったのですが、たぶんそうでしょう。この点は読んでもらうしかないのですが、この物語の世界観が一気に広がった感じがしたものです。

焼酎太郎さんのブログには、この作者には本書と関連する『ふたつの星とタイムマシン』という作品もあると書いてありました。調べてみると『ふたつの星とタイムマシン』のほうが先に書かれた作品のようです。その作品あって、本書が描かれています。

この「パラレルワールド」という世界に関しては以前から思っていることがあります。本書の中でも主人公が言っているのですが、今自分がいるこの世界では自分(主人公)はそれなりの満足を得た生活をしているのかもしれませんが、自分が以前いた世界では自分の生活は以前のまま、つまりは自分の不満は解決されないままだということです。

本書で言うと、恋人は死んだままなのです。この世界では死んだはずの恋人は生きていて、自分はそれなりの満足を得ていますが、元の世界では何の解決にもなっていません。

小説では読者は主人公目線で考えますので、今の主人公の世界が大団円ですのでそれでいいと言えばいいのですが、その点がどうも気になるのです。

ちなにみ、本書のカバーイラストは、お笑いコンビキングコングの西野亮廣さんが描かれています。『ふたつの星とタイムマシン』もそうで、思いのほかにうまく、印象的な絵で感心してしまいました。悪くないですね。

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No title

こんにちは(*^^*)
私もいつも参考にさせて頂いてます。

レビューを読んでいて、「パラレルワールド」 の世界、そう言われればそうだなと思いました。
主人公が今いる世界の方ばかり目がいってしまうのですが、元の世界 (彼女が死んでしまった世界) も続いているのですよね。
元の世界から主人公は今の世界に来てしまったわけですが、その場合、元の世界では彼は消えてしまっているのでしょうか?
ふと思いまして、頭が混乱しちゃいました^_^;

Re: No title

ひだまりさん、始めまして。
コメントありがとうございます。

> こんにちは(*^^*)
> 私もいつも参考にさせて頂いてます。

いえいえ。
ひだまりさんの紹介されている本は、普段私が読まない作品があり、
実に参考になるのです。

また、ひだまりさんのブログの構成自体もとても読みやすく、
また感じが良くて、私のサイトの参考にさせてもらおうとも思っています。

> レビューを読んでいて、「パラレルワールド」 の世界、そう言われればそうだなと思いました。
> 主人公が今いる世界の方ばかり目がいってしまうのですが、元の世界 (彼女が死んでしまった世界) も続いているのですよね。
> 元の世界から主人公は今の世界に来てしまったわけですが、その場合、元の世界では彼は消えてしまっているのでしょうか?

そういう、彼がいない世界として存続しているのではないでしょうか。


私は昔からSFが好きで、クラークやアシモフなどをよく読んだものです。
そんな中で、ご存知かとも思いますがハインラインの『夏への扉』というタイムトラベルものがありますね。

この本を読んでその作品を思い出しました。
若かりし頃読んだこの作品をもう一度読んでみようかなどと思っています。

今後ともよろしくお願いいたします。

No title

ありがとうございます。
そうですよね、彼がいない世界のまま続いていることになるのですよね。
ひょっとしたら、無数にあるパラレルワールドの中には主人公と彼女が恋人になっている世界もあるのかもしれないですね(*^^*)

私もSFは大好きです。
恥ずかしながら『夏への扉』はまだ読んだことがなくて・・・。
ちょっと気になりました。

ブログ読みやすいと言って頂き、素直に嬉しいです。
ありがとうございます(*^o^*)
こちらこそよろしくお願いします。

Re: No title

> ひょっとしたら、無数にあるパラレルワールドの中には主人公と彼女が恋人になっている世界もあるのかもしれないですね(*^^*)

そうだと思いますよ。
人が何かを決断するたびにパラレルワールドは増えていく、という話をどこかで読んだ記憶があります。

> 私もSFは大好きです。
> 恥ずかしながら『夏への扉』はまだ読んだことがなくて・・・。

ハインラインはどれもお勧めですが、『夏への扉』も素晴らしいです。
いつか、気がむいたときにどうぞ。

でも、1950年代の作品なのでちょっと古く感じる可能性も・・・。
それが心配です。
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Author:siro
このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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