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米澤 穂信 折れた竜骨



ストーリーを一言でいうと、ソロン諸島の領主が殺され、領主の娘アミーナが騎士ファルクとその従士である少年ニコラの力を借りて、領主殺しの犯人をつきとめるという話です。

始めは本書をファンタジックな物語にミステリーの要素を盛り込んだ心躍る小説だと単純に思っていたのですが、本書をよく読んでみるとこれはいわゆる本格派のミステリーではないか、と思うようになりました。

本書が、実際に本格派のカテゴリーに分類されるものなのか否かは私にはよく分かりません。しかし、犯罪動機よりも、発生した事件にまつわる謎を探偵役が解き明かす過程に重きが置かれ、その謎を十全に成立させるための舞台背景を整えることが本格派の推理小説の大前提となるとするならば、本書はまさにそれに該当します。

そもそも、設定された謎のために設けられた舞台や謎ときの過程が現実感を欠くところに、私が本格派といわれる推理小説にのめり込めない原因があったのですが、本書の場合、その舞台設定に無理があるとは感じませんでした。

それは、中世の欧州、それも魔法と剣の世界を舞台にしているという点にその理由がありそうです。現実感のない設定である筈のところが、そもそも現実を無視した舞台なのですから当然です。

そして、この作者の『王とサーカス』という作品を読んだときにも思ったのは、米澤穂信という作家は、ミステリーを抜きにした純粋に物語作家としても素晴らしい才能を有している人なのだということです。

その面白い物語というのは、『インシテミル』でも感じたように、結局は、その小説が人間ドラマを盛り込んだ物語として成立しているかどうか、ということに帰着するようです。

そしてこの作家の作品は本書『折れた竜骨』も含めて物語として非常に面白いと言うわざるを得ないのです。

本書の場合、物語の面白さ加えて謎解きの要素が入っていて、第64回日本推理作家協会賞、第11回本格ミステリ大賞候補、第24回山本周五郎賞候補という受賞歴をもつほどですから、ファンタジー好きのみならずミステリーファンを惹きつけたというのはよく分かる話なのです。

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