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梶尾 真治 怨讐星域Ⅰ ノアズ・アーク


ロマンチックなタイムトラベルものを得意とする梶尾真治の、星間旅行や異世界での冒険物語を取り混ぜた大河小説です。

太陽のフレア膨張による地球消滅から逃れるため、アジソン米大統領と選ばれた3万人だけを乗せた世代間宇宙船ノアズ・アークが、密やかに出航した。残された人々はノアズ・アークを呪い、大統領の娘ナタリーの恋人が発明した星間転移で決死の脱出を図った―。2つの人類の目標は、172光年先にある約束の地。生き残りを賭け闘う人間それぞれの受難、愛憎、そして希望を通して、世界の喪失と再生を描く、SF大河ロマン。(「BOOK」データベースより)

梶尾真治のいつもの雰囲気とは少々異なった、シリアスな群像劇です。梶尾真治は1991年に、『サラマンダー殲滅』という冒険SFを書いて日本SF大賞を受賞していますが、多分、その作品に一番近いのではないでしょうか。内容がではなくて、物語が持っている雰囲気の話です。

地球滅亡の危機に人類の存続をかけて星間宇宙船ノアズ・アークで他の星を目指す、という物語はハインラインの『宇宙の孤児』やクラークの『遙かなる地球の歌』など、SFでは珍しくはないテーマと言えるでしょう。

また、物質転送というアイデア自体も、映画ではありますが『スタートレック』や『ザ・フライ』で描かれているように目新しいものとは言えません。

しかし、この両者を組み合わせ、172光年先の惑星「約束の地」に転移を果たした人類と、世代間宇宙船での航行を終えた人類との出会い、などという発想は私の知る限り初めてだと思います。

星間宇宙船内部での物語と目的となる172光年離れた惑星に一足早く転移(ジャンプ)した人達の未知の星(約束の地)での開拓の苦労、そして残された地球での生活を選んだ人たち、という三者の物語が、相互に少しずつ絡み合いながら、それぞれ独立した物語として語られます。

世代を越えた物語ですので、登場人物も当然のことながら変わっていきます。梶尾真治お得意のタイムトラベルを駆使し、同一人物を登場させることも可能だったでしょうが、そうするとこれまでの物語とあまり変わらず、更にはせっかくの星間宇宙船と星間転移というアイデアも霞んだことでしょう。

星間宇宙船ノアズ・アーク、約束の地それぞれで展開される物語は、梶尾真治らしい人間味あふれた物語が展開されています。極端に言えば、上質な短編が、連作として舞台だけを同じくした設定で語られているようで、それでいながらそれぞれの話には共通した骨子があるとも言えそうです。

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