スティーヴン キング ドクター・スリープ(上・下)








S・キングの初期の名作作品である『シャイニング』の続編となる長編小説です。

1977年に発表されたホラー小説の『シャイニング』は、スタンリー・キューブリック監督の手で、ジャック・ニコルソンを主人公としたホラー映画として作成され、小説とは別に映画版の『シャイニング』として古典的な名作として確立されています。ただ、キング自身はこの映画に批判的なようです。

本書はこの『シャイニング』で、からくもロッキー山上にあるオーバールックホテルから脱出することに成功したダニー少年のその後が描かれています。

ダニーはその父親ジャック・トランスもそうであったように、アルコール中毒であり、そのために定職につくことができないでいます。常に「オーバールックホテル」での悪霊の影におびえながら、酒に逃げないではいられなかったのです。

そうして「じきにいよいよ三十の大台」にもなろうとする頃に本書の本題の舞台となる町フレイジャーに流れ着きます。そこで会ったビリー・フリーマンの紹介で町のサービス係とも言うべきキングズリーという男から雇われ、この町に居つくのでした。

その後、この町の近くで生まれた、本書の本当の主人公と言ってもいいアブラという女の子と、お互いに見知らぬままでの心の交流が始まります。そして、アブラの成長に伴い、真結族との対決の時が近づいてくるのでした。

本書はキングの特徴である緻密な描写をそのままに、ダニーと悪霊との戦いを描いています。しかしながら、物語の面白さはかつてのキングの小説ではないと言わざるを得ません。

前作『シャイニング』では悪霊は人知を越えた不可思議な、言わば「悪意」そのものと言える存在でした。しかし、本書においては「真結族」という具体的な悪として登場します。ローズというシルクハットをかぶった女をリーダーとする真結族は、「かがやき」というダニーやアブラたちが有する能力を「命気」として自分たちの生命の源として吸い上げることを目指しているのです。

つまりは、アメリカ・メイン州にあるセイラムズ・ロットと呼ばれる田舎町を舞台にした、やはりキングの初期の名作のひとつである『呪われた町』が吸血鬼を取り上げていたのと同じように、人間の「命」を食料にする者たちを相手とする物語です。

シャイニングで感じた、SFで言うセンスオブワンダーのような感動は少なくとも本書ではありません。往年のキングの作品は、「悪」そのものを体現する超自然的な存在を具体的に描くことなく、例えば「IT」におけるピエロのような抽象的な存在として描くだけで恐怖感を演出していました。しかし、近年の作品では、「悪意」ある存在を、近頃のアメリカのホラー映画のように、具体的なクリーチャーのような実在として描いている印象が強く、往年のような恐怖感を感じないのです。

勿論、キングの作品の常として、描写はとても緻密であり、ときには饒舌に過ぎる印象すらあります。しかし、『スタンド』や『ダークタワー』といった大作でもそうであったように、時代を象徴する音楽やアイテムといった時代性をも織り込んだ緻密な描写の上に構築される悪意ある超自然的存在こそがキングの小説の醍醐味だった筈ですが、その印象が薄くなっているのは残念でした。

しかしながら、読後で読んだネット上でのレビューでは、結構評価が高いところをみると、私のように感じる人は少ないように思われます。

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