FC2ブログ

高田 郁 あきない世傳金と銀〈2〉早瀬篇




「あきない世傳金と銀」シリーズの第二巻目「早瀬篇」です。



九歳という年齢で大坂天満の呉服商「五鈴屋」に女衆として奉公することになった幸でしたが、同じ女衆のお竹らや番頭の治兵衛にも助けられながら、商売人としても少しずつ成長していました。

「五鈴屋」の店主徳兵衛は周りからは「阿呆ボン」呼ばれるどうしようもない四代目であり、そうした現状を憂える治兵衛は十四歳になった幸を四代目徳兵衛の後沿いにと図ります。しかし、治兵衛が卒中を起こして倒れ、「五鈴屋」からは身を引くことになります。

なんとか幸と四代目の祝言だけは済ませて呉服屋の仲間からも認められ、晴れて「ご寮さん」となった幸でしたが、四代目は幸の体を触ろうともせず、お歯黒も許さない日々が続くのでした。



第一巻で奉公に入り、一生懸命に奉公してきた幸がご寮さんになり、今度は「五鈴屋」の柱となって盛りたてていく立場へと変化します。阿呆ぼんと呼ばれるほどのどうらく息子の嫁となり、どんな苦労が待っているのかと感情移入する物語の流れです。

でも、幸を描く作者の筆がそれほどに暗いわけでもなく、それどころか、これからの「五鈴屋」を幸がどのように盛りたてていくのかという点にこそ読者の関心は移るように描いてあります。そうした点がこの作者のうまさなのだろうと本書を読みながらも考えていました。

波乱万丈という言葉がピタリと当てはまる幸の運命の変転ですが、読者にとっては意外というしかないストーリーの展開です。勿論、この意外性は面白さに通じるものであり、このあとどのように展開するのだろうと、作者の思惑に見事にはまっているのです。

物語の合間には、例えば見舞いに来た幸に病床の治兵衛がかけた「まずは知識をしっかりと身につけなはれ。」、「智恵は、何もないところからは生まれしまへん。知識という蓄えがあってこそ、絞り出せるんが知恵だすのや。」という言葉があります。

こうした言葉自体は現実にもよく言われる言葉であり、特別な言葉ではないのですが、物語の登場人物の暖かな言葉としてかけられると、あらためて心に沁みます。

このような、ちょっとした、決して特別ではない言葉のやり取りに読者が引き込まれていく一つの要因があるように思えます。なんでもなさそうな言葉を胸に頑張る主人公の姿を読者は待っているのでしょう。

前巻の最後でも思いもかけない展開があったように、本書も終わりにまた新しい展開が待っていました。このシリーズが人気シリーズになっているのもよく分かる展開でした。

早速次を読みたいと思います。
関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

siro

Author:siro
このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR