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今野 敏 防諜捜査




倉島警部補シリーズの第五弾です。

当初は、公安警察という珍しい分野の小説で、それもどちらかと言うとアクション小説に近い構成の物語でした。それが、前作の『アクティブメジャーズ』では倉島がゼロで研修を受けつことになって公安警察としての物語になり、本作に至っては、倉島が公安捜査員として独り立ちするエースと呼ばれる立場になっています。

小説の主人公として物語の中心にいるのは変わりないのですが、本書の倉島は誰かに頼るのではなく、自ら判断しメンバーに指示を出し、事件を解決するのです。



マリア・ソロキナというロシアの美人ホステス轢死事件に、倉島と同じ第五係の同僚である白崎敬が目をつけてきました。倉島はロシア大使館の三等書記官のアレキサンドル・セルゲイヴィッチ・コソラポフと会い、情報を収集することにします。

調べていくと、どうも事故や自殺としては不審な点が出てきます。そこに仲間の一人である伊藤から、都内の中学校教師がロシア人に命を狙われているとの届け出があり、マリア・ソロキナの事件もロシア人の殺し屋がやったとも言っているらしいのです。

倉島はかつての仲間でもある公安機動捜査隊の片桐秀一をも借り出し、マリアの事件を本格的に調べることとするのでした。



このシリーズの前作『アクティブメジャーズ』を読んだのが2013年10月ですから、随分と間が経ってしまいました。

前作あたりから公安警察の物語として展開しつつあったこのシリーズも本作にいたって、公安警察の物語として確立したように思えながらも、従来の刑事警察ものとの差異が物足りないとも感じます。実際のところ、前作『アクティブメジャーズ』に関しての本ブログを見ると、本作と同様の印象を抱いているようです。

というのも、事件の端緒が殺人事件と思料される事件であり、捜査の経過もロシア人女性の事故を偽装した殺人という形式で展開しますので、通常の刑事警察の小説とそれほど異ならないように思えるのです。

ただ、本書の中で倉島が自分の判断で捜査を開始し、チームを作り、捜査費用を貰いながらロシア大使館員から情報を収集する、などの特徴はあります。

そういう意味では公安警察の小説ではありますが、なお普通の刑事警察小説の香りをまとった物語として仕上がっていると感じるのだと思います。

ただ、本書の倉島は、若干ではありますが、まるで隠蔽捜査の竜崎署長のような印象を持ちました。以前は駆け出しの公安捜査員だった倉島が、本書では「作業班」として、部下を組織し、そして自由に指揮命令する立場になっていることを明示的に示しつつも、それなりに施行錯誤する様子が、署長という立場の竜崎と類似したものでしょうか。

どちらにしても今野敏の描く小説の面白さは十分に備えた物語でした。
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