辻堂 魁 はぐれ烏 日暮し同心始末帖





日暮し同心始末帖シリーズの第一巻です。

第一話
世間体や店のことばかりにしか眼がいかなくなっている分からず屋のおやじと、若者に一途な恋心を抱く娘、それに娘を想いながらも身を引く若者、という典型的な人情話を、人の良い龍平が纏めようと奔走します。

第二話
一人の童女が母親を探して欲しいと言ってきた。父親は行方不明になり、田舎に一緒にいた母親もいなくなったというのだった。
童女を巻き込んだ男と女の物語です。

第三話
何も知らない女房のもとに五年ぶりに帰ってきた夫の喜一は、実は強盗団の一味となっていた。上役から探索を命じられた龍平は、喜一の住む長屋に移り住むのだった。


『風の市兵衛』シリーズの著者の描く同心ものの時代小説です。実はこの作者にはすでに『夜叉萬同心』シリーズという北町奉行配下の隠密同心・萬七蔵を主人公とする同心ものもあり、本書とは時間軸を同じくしているところも見どころです。

本シリーズの主人公は、旗本でありながらもお目見え以下の不浄役人と呼ばれた町奉行所の同心職についている日暮龍平という男で、柔和な顔の下に小野派一刀流の剣の技量を備えていることは誰も知らないことでした。

≪その日暮らしの龍平≫と同僚から揶揄され、雑用を押し付けられても嫌な顔一つせずに仕事をこなしています。貧乏旗本の三男として「部屋住みでくすぶっているよりは、ましでしょう。」として町方同心の日暮家へと婿入ったのです。日暮家の一人娘麻奈との間には俊太郎という息子も得て、日々を充実した気持ちで送っているのでした。



この作者の文章は『風の市兵衛』シリーズでよく知っているところであり、本書においてもそのまま変わるところがありません。登場人物のキャラクターも魅力的であり、早く読んでおけばよかったと思うだけです。

特に、日ごろはおとなしく、その実凄い剣の腕前の持ち主という、ある意味ベタな設定を、小気味よく読ませてくれるという点ではやはりうまいものだ、というしかありません。

捕物帳という形ではありますが、人情話が主な本書です。ただ第三話に限っては、人情小説ではありつつも、つまりは主人公の日暮龍平の“実はヒーロー”という側面を見せるために書かれた作品だと言うべき物語です。
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