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今野 敏 精鋭





またユニークな警察小説がありました。

確かに警察小説です。しかし、ミステリーではありません。言ってみれば、警察という組織の紹介を兼ねた、一人の青年の成長譚でもある長編小説です。



柿田亮は警察官として任官し、まずは地域課へと配属され、その二ヶ月後には刑事課へと移されます。初任教養の後の配属、いわゆる「卒配」は研修の一環だそうで、いろいろな現場を体験させるそうなのです。

その後、いろいろな現場での研修を終え、一旦警察学校へ戻って二ヶ月間の初任総合教養を受けます。その後、卒配されていた所轄署の地域課へと配属されことになるのです。

そして、正式に所轄の警察署に配属された後、先輩から、警察の権力の防衛装置としての本質についての考えなどを教えられます。つまりは、外敵から国を守るのが軍隊であり、国内の強盗や窃盗、詐欺などの犯罪から国民を守るのが警察だというのです。

また、国の内部でのテロなどの不安定要素に対する警備部があって、その中に公安があり、身体を張って国を守る機動隊があるということを知るのでした。



以上のようにして、本書は警察の組織を紹介する小説ともなっているのです。

また、それぞれの配属先で突き当たる現実と、警察というものの在り方との間で悩み、何故そうした悩みを抱くか、の検討の過程で、その職場の職種とそれに対する警察官の心得を明らかにしてあります。

その結果、作者なりの一応の結論を導いたうえで、主人公を身体を動かすことを主にできる職場へと転身させています。その結果、警備という職分の中での機動隊という、普通の警察小説ではまず舞台になることはない分野が舞台となっていきます。

勿論、その場所ではその場に応じた新たな疑問が噴出し、それに応じた悩みに直面します。しかし、もともと学生時代の部活動としてラグビーをやっていた柿田はただひたすらに身体を動かすのです。


自分の現在、環境について悩む主人公の姿を追いかけるこの小説は、めずらしい青春小説としても捉えることが出来そうです。

それは中学生や高校生が主人公の青春物語とはまた異なる、現在進行形で社会で鍛えられている青年の成長物語という意味でのそれです。


ミステリーの要素は全く有りません。その代わりと言っては語弊がありますが、改めて日本という国のありようを考えるきっかけともなりうる物語でもあります。

警察組織の中で生きていく主人公は、警察とは何かを考えていくのですが、それは読者に対しての問いかけでもあるようです。警察組織は時の権力者の擁護組織として進化してきたのであり、そうした組織の中で、作者は、一人の警察官に、警察官は権力者を守るのではなく、市民を守る組織だと認識していると言わせています。

その考えは、後になって自衛隊の存在に関わる問いとなって、再度問いかけられます。

様々な読み方が出来る小説です。今野敏という自ら格闘技をマスターし、警察小説を数多く書いている作者だからこそ書ける小説だと思えます。
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