辻堂 魁 冬の風鈴 日暮し同心始末帖3





日暮し同心始末帖シリーズの第三弾です。

序 三年三月
小石川小日向の質屋朱鷺屋長佐衛門が金と命を奪われてから三年と三月がたったころ、石川島人足寄せ場から解き放ちとなった常州無宿鉢助は、翌朝佃島の沖で死体となって見つかった。

第一話 春蝉
龍平は、鉢助が人足寄せ場におり、その前は越中島の岡場所で二十両の散財をしたのちに物乞いとなり、無宿人狩りに遭ったことを調べ出す。その後、鉢助の家を訪ねると、鉢助という男は既に死んでいたことが判明するのだった。

第二話 冬の風鈴
鉢助の死に関係する常次という男を使っていた火付け盗賊改同心土屋半助が龍平を訪ねてきて、常次は朱鷺屋長佐衛門妾宅への押し込みの一人の鉢助こと伝七を追っていたので、あとは自分に任せてほしいと言ってきた。

第三話 おぼろ月
朱鷺屋長佐衛門妾宅への押し込み殺の一人と思われる忍平ノ介の捕縛に、平ノ介の兄と名乗る男が同道させてほしいと言ってきた。平ノ介の過去にひそむ悲哀を胸に含み捕縛に向かう龍平だった。

桔 一刀龍
俊太郎が喧嘩をした相手に謝りに行く龍平は、傲慢な相手の親の言い分に従い試合をすることになる。


前巻で感じた「弱者の悲哀」という視点は今回もそのままでした。このシリーズの色合いとして定着していくのでしょうか。

本書ではやはり虐げられていた一人の女性が、妾としてでもまた旦那となる男からひどい仕打ちを受けている姿が描かれています。こうしてみると、この作者の『風の市兵衛シリーズ』よりも、『夜叉萬同心シリーズ』の方により近い雰囲気を持っていると言えるのでもしれません。

前作でもそうでしたが、本書は弱者を食い物にする非道の輩をやっつけるという王道の痛快ヒーロー時代小説です。

ただ、描かれる弱者が、前巻の濡れ衣を着せられた市井の銀吹き職人とその家族や、本書で描かれる家族のために身を売り、そして身請けされて妾となった女やその想い人などのように、虐げられてもなお生き抜こうとしますが更に試練が加えられるという、決して痛快小説というわりには明るくない内容なのです。

それでも、物語として重く、暗い話とはなっていないのは、主人公の龍平自身の持つどこかのんびりとして、捉えどころのない人柄や、龍平の家族のほのぼのとした雰囲気などにあると思われます。

周りからは、「その日暮らし」の使い勝手の良い下っ端、とみられている龍平が、実は剣をとっては奉行所一の腕を持つ、という痛快小説の定番を押さえてありながら、それがありふれた話になっていないのも、こうした設定のためであり、つまりはこの作者の手腕によるものでしょう。

そうした痛快さが堪能できる一編として、本書の「桔 一刀龍」などは典型的な話です。しかしながら、そこにカタルシスを十分に感じることができるのですから、この作者からは目が離せません。
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