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今野 敏 道標 東京湾臨海署安積班




東京湾臨海署安積班シリーズ第十六作目の短編の警察小説です。

本書では、この物語の中心人物である安積剛志警部補と交機隊の速水との初任科での姿や、安積警部補と石倉鑑識官との出会いなど、安積班シリーズの隙間を埋める短編集であり、ファンにとってはたまらない作品です。

目次
初任教養 / 捕り物 / 熾火 / 最優先 / 視野 / 消失 / みぎわ / 不屈 / 係長代理 / 家族


『安積班シリーズ』は、臨海署の安積剛志警部補を中心とする捜査班が、個々人の個性を活かしながら、チームワークの力で担当する事件を解決していく姿が魅力となっているミステリーです。

このチームワークは安積班のメンバーだけでなく、鑑識の石倉係長や、交機隊の速水らも加わってのものであり、場合によっては、臨海署全体を一つのチームとして捉えることすらあります。

こうした仲間意識こそがこのシリーズの魅力であるとするならば、彼らの来歴もまた物語の一環としての関心事であることは当然であり、本書はそうした観点から描かれていると考えられます。


また、本書『道標 東京湾臨海署安積班』では、物語の視点を少々変えたり、同じ事柄を別で視点で描きなおしたりと、小説手法としてもいろいろと工夫されていることも見どころの一つと言えるのではないでしょうか。

例えば第一話「初任教養」では、初任科での安積と速水らの姿が描かれていますが、この物語の視点の持ち主「私」は同じ初任科の五人からなる仲間の一人で、名前すら明確ではありません。

この全くの第三者の視点で、安積と速水という人物を客観的に描き出してあり、現在の安積と速水それぞれの正義感、行動力の原点をうまく描写してあります。

また、例えば第四話「最優先」と第五話「視野」では、新任の安積係長のもとで起きた強盗事件を、東京湾臨海署刑事課鑑識係の係長となっている石倉と、村雨秋彦巡査部長のもとで鍛えられている大橋武夫巡査という異なる視点で描き出してあり、短編ではあるものの事件解決の過程の異なる側面を見せると同時に、安積剛志という人物像を立体的に描写してあります。

さらには、このシリーズではまだ新しい水野真帆巡査部長の横顔や、警察ではない東報新聞の山口という記者までも登場させ、多様な視点からの安積剛志を浮かび上がらせてあるのです。

このように、話の登場人物や時代背景、そして物語の視点を変えながら安積警部補という人物像を多面的に見つめなおすと同時に、チーム全体にも光を当てた読み応えのある一冊になっています。
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