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今野 敏 エムエス 継続捜査ゼミ2





継続捜査ゼミシリーズの第二弾です。


三宿女子大人間社会学部教授の小早川一郎は、毎週水曜日に開かれる刑事政策の演習ゼミで取り上げるべきテーマを探していた。このゼミは、研究テーマとして未解決事件を取り上げているところから通称継続捜査ゼミと呼ばれていた。

取り上げるべき事件が見つからないままに、ゼミの流れは冤罪の危険について考える方向になる。

その後三女祭で行われるミスコンへの反対運動の話へと話題は移り、実際、小早川の話を聞きたいと、ミスコン反対派のリーダーといわれる高樹晶という学生が小早川の研究室へと、ミスコンについての小早川の話を聞きたいと現れる。

ところが、小早川の研究室から帰った筈の高樹晶が何者かに襲われけがをするという事件が起きる。

駆け付けた小早川が近くにいた巡査部長の警官と少々もめると、その後すぐに大滝という強行犯係長がゼミの最中にやってきて、高樹晶に対する傷害容疑で任意同行を求めてきたのだった。



目の前にあった今野敏の未読小説を借りてきたら、シリーズの第二弾だったというお粗末。しかし、小説はいつもの今野敏の小説であり、非常に読みやすく、面白いものでした。

ただ、面白い作品であることに間違いはないものの、違和感がありました。今一つのリアリティアがないのです。緊張感がないと言い換えてもいいかもしれません。

それは、女子学生の学問が前提の対話、推論こそを主眼とするゼミを舞台としていますので、発生した殺人事件の犯人を見つけることを目的とするが多い通常のミステリーとは前提が異なり、致し方ないことかもしれません。



しかし、少なくとも本書に関しては、物語の描き方そのものから違う気がします。

それは、一つには主人公である小早川教授の存在感があまり感じられないこと。二つには、女子学生らの活躍する場があまりないので仕方のないことかもしれませんが、女子学生らのキャラクターがあまりはっきりとしていないことがあります。

そして第三に、これが一番大きいのですが、ストーリーがあまりにデフォルメされすぎています。ストーリーが単純化されすぎているのです。

それは、登場人物のキャラクターも含めてという意味であり、主人公の小早川教授を犯人として思い込んでいる大滝強行犯係長の存在自体が単純化されすぎだと感じました。



今野敏の小説自体がストーリーの単純化を一つの特徴としているといってもよく、そのこと自体は決して悪くはないと思っています。

単純化してあるために物語が読みやすく、今野敏の文章の読みやすさも相まって一級の面白さを持つ小説が出来上がっていると思うからです。



しかし、本書の場合、優秀な刑事であるはずの大滝係長が主人公の小早川を犯人と思い込み、本書のテーマにもなっている冤罪事件へまっしぐらに突っ走るキャラを演じさせられている点は行き過ぎでしょう。

今野敏の小説らしい、読みやすく面白い小説です。ただ、本書の主要テーマである冤罪という点について広げるという点で理解はできても、その点は少々残念なところでした。
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本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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